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祭のものぐさもったり手帳

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タイトルなし

気がついたら、いつも同じような展開
そしていつも同じくフられる
諦めずに、エンジェルたちにアタックするけど
すぐにビンタを喰らう

ナイスな台詞があれば、エンジェルもすぐにメロメロだけど
何回言っても
何回言っても

エンジェルたち落とせないよ
あの笑顔にいつだってやられている
後ろに回って声をかけても
「キモい」言われて逃げられる
薔薇の花束用意したけれど誕生日じゃないから意味がない

だから次は絶対に落とすから

俺は部屋の合鍵しっかり用意する

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旅戦の王女 第39話『籠の少年。青空目指して22』

 トーンは溢れる涙を拭うことも忘れ、顔をぐしゃぐしゃにしながらブランクを睨み付ける。純粋で透き通った瞳なだけに、心に抱えた憎悪や怒りがダイレクトに見ている側へと伝わってくる。コロナは初めてみる王女の激しいまでの怒りと悲しみにわずかに恐れおののいていた。
 「起こしてっ!今すぐ起こしてぇっ!」
 口を大きく開けて金切り声をあげる。そしてすぐそばに落ちていた拳大の石を拾い、腕を振り上げて怒りをぶつけるかのように投げつけた。石は風を切りながら高度を落とさずに、真っ直ぐブランクの顔目掛けて飛んでいく。
 ―ビシッ
 何かに当たったような鋭い音がする。石が当たったのかと投球ポーズのままの姿勢でいたトーンが顔を上げる。そして、驚く。
 投げられた石はブランクの目の前で『止まっていた』
 落ちた訳でも、弾かれた訳でもない。ただ時間が止まったかのようにその場に『止まっている』
 その光景にトーンとコロナが唖然としている中、ブランクは至って涼しい顔で唇の端を吊り上げた。―途端、石にマス目上の亀裂が入り、端から消えていく。欠片一つ残さず、風化するかのように跡形もなく消えた。
 「…長い間空白を彷徨っている間にね、こういうことが出来るようになったんだ。すべてを『0』に…『空白』に還す力を…ね」
 ふふ…とブランクは奥ゆかしく笑う。
 12年前は強大な力を扱っていたが、それは魔法使い自身の嘆きや怒り、悲しみなどを扱った負の力。つまりは闇の力である。スケールは圧倒的に違うが、コロナや他の下級魔法使いに理解出来ない魔法ではない。しかしこれはなんだ?
 「…そんな魔法…在り得な…」
 「くないんだよ?」
 呆然と呟いたコロナの頭上から容赦ないブランクの言葉が降ってくる。
 「むしろ、本に載っていない予想外の出来事すべてを、『在り得ない』の一言で片付ける方がよほど在り得ないと思うよ。…この世界で起こりえているすべての出来事を、これから起きるであろう未来を、矮小な人間が知り尽くしているなんて…そんな考え、おこがましいにもほどがあると思わないかい?」
 なぁ、賢者様?―耳元で囁かれ、コロナはぞくりと背筋が凍る思いになる。それは言論で言いくるめられたとか、耳に空気が入って肉体的にぞくっときたとかそういう生易しいものではない。つまりはブランクは言っているのだ。
 まだ俺には予想外の力を持っているんだ、と。
 そして今後、近い未来、その予想外の力で予想外の出来事を起こすぞ、と。
 「じゃあ手始めに…消す?」
 え?とコロナは固まる。その言葉は明らかにコロナではなく、トーンに向けられていて、そして空いている左手人差し指は、右手で首輪を掴んで拘束しているコロナに向けられていた。
 「その方がわかりやすいよね」
 にこりとブランクは穏やかに、無邪気に笑った。
 もちろんそんな提案許されるハズがない。
 「駄目えええぇぇぇっ!!」
 トーンは大絶叫と共に、足元に落ちていた小石を手当たり次第拾ってブランク目掛けて投げつけた。無数の小石がすべてブランクだけをピンポイントに狙って飛んでいくのだが、
 ―ピシピシピシッ
 すべて目の前で止まり、すべて消えた。
 「駄目ったら駄目ええぇぇぇっ!!」
 ついにトーンは走り出し、飛び上がる。そしてブランクの鼻っ柱に向かって右手拳を振りかざした。拳の起動は確実にブランクを捉えていた。が、
 「うわぁっ!?」
 ドスンと大きな音がして、トーンは5メートルは吹っ飛び、背中から地面へ叩きつけられる。
 「トーンっ!」
 未だ拘束された身のコロナが叫ぶ。あまりにも盛大な音だっただけに、脊髄損傷など嫌な考えが過ぎる。しかしそれはあくまで心配性なコロナの杞憂に過ぎず、いたた…とお尻をさすりながらトーンはのそりと起き上がった。その様子に、コロナは胸中でほっと安堵のため息をつく。
 「せっかく逢えたのに、消す訳いかないからね。…これは俺からのささやかなお仕置き」
 ブランクはあまりにも余裕な台詞を吐く。
 一部始終を見ていたコロナには、ブランクが動いた様子や素振りは一切見られなかった。ただ目に見えない力に反発したかのように、トーンが自ら吹っ飛ばされただけだった。その力からは賢者が使うような光もなく、禍々しい闇もない。何もない、空白なのだ。

 「…いい?消すよ?」
 トーンの答えを待たず、ブランクの左手がコロナの肩を掴む。びくりとコロナが最大級の恐怖を感じて震え、瞼を硬く閉じる。消されるということは死ぬとどう違うのか、脳裏を掠めるこの考えにもはや自嘲すら感じる。掴まれた肩に感じるひやりとした体温の低い手のひら。それがじわじわと熱を帯びて、
 「だああぁぁぁっ!!」
 雄たけびと共に突如強い衝撃が走った。そして次の瞬間、それまで首輪を掴んでいたブランクの右手が離れ、コロナは地面へと投げ出された。
 「コロナっ!」
 トーンが倒れているコロナの元へ駆け寄り、頭を起こす。一瞬何が起こったのか理解出来なかったコロナだが、頭を上げてもらい、視界が広がることですべてを理解した。
 「…あいつは…」
 ブランクがハエを払うように右手を振り下ろすと、その動きに合わせて吹っ飛ばされる。しかしトーンやコロナのようにただ地面に叩きつけられるのではなく、受身を取り、一回転して起動体勢を取る。
 深緑を思わせる鮮やかな緑色の髪が夜風に流れ、銀色の矢じりのような刃先が月光にきらりと鋭く光った。



* * *



バトルシーンは難しいよね。って話です。
いつも以上に時間かかりました;だらだらと風景の説明をしたり、キャラの心境を語るのは好きなんですがねぇ…
という訳でファルル君再登場!がんばるぞーお

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旅戦の王女 第38話『籠の少年。青空目指して21』

 「…ブランク…っ!」
 首輪を掴まれ、つま先立ちに近い状態でコロナは苦々しくその名前を口にする。
 長い空白というのは封印されていた期間を指すのだろうか?12年といえば長い気もするし、そうでもない気がする。先ほどのブランクのあまりにも時間間隔が曖昧な台詞が脳を掠める。
 世界を疑心暗鬼で混乱に陥れ、『人柱』を使ってまで封印した12年前の『闇の現事件』の魔法使い。それが今目の前に現れている。しかも若い長身痩躯の青年の姿で(封印された当初は力のみが暴走するあまり、魔法使いの姿は原型は留めていなかったと聞いている)

 「コロナっ!」
 突如背後から名前を叫ばれた。コロナは掴まれた首輪を必死に抑え、首をギリギリと捻って後ろを何とか横目で見る。
 トーンの顔が見えた。ようやく見ることの出来たその表情は、悲しみと驚きと不安と恐怖と怒りを一緒くたにしたような、見ているだけで世界が終わるような、そんな表情だった。
 「…ミクロ王女…」
 城下の礼拝堂で再開したとき、ミシロ王女のことを話している顔よりも更に複雑で困惑した表情。コロナまでもがどうしていいかわからなくなる。
 トーンは拳を強く握り締め、ありったけの力で叫んだ。
 「…コロナを離してよっ!」
 一度叫ぶとその勢いは止まらず、今にも殴りかかりそうな勢いで拳をぶんぶんと振るいながら、思いついたことをブランクに向けて叩きつける。癇癪を起こしたような様子に、コロナは息を吸った。
 「ようやく逢えたとかって僕わかんないし!君になんて逢いたくもなかったし!12年前とか僕生まれてないし!訳わかんないこと言わないでよ!いいからコロナを離して…っ!」
 「逃げろっ!!」
 びくっとトーンの体が震える。吸い込んだすべての空気を出し切り、コロナははぁはぁと軽い息切れを起こす。
 「…ころ…な…?」
 トーンは信じられないと言った様子でコロナを見つめる。突き刺さるような悲しく痛い瞳であったが、コロナは目を逸らさなかった。
 「…俺はいいから…!逃げてください…!」
 必死だった。『ミクロ王女を一刻も早くこの魔法使いから遠ざけなければならない』ただそのことだけを頭の中で何度も復唱していた。
 最悪の事態―すなわちミクロ王女がブランクによって殺害されること。もしくは何らかの致死量に近い呪いか、強い悪影響を受ける―それだけはなんとしても避けなければならなかった。
 「早くこの場から離れてください!」
 「でも…っ!」
 コロナの強い訴えに、トーンの足はそれでも動かない。
 なんとしても事態の重さをトーンに伝え、自ら安全なところまで逃げてもらわなければならない。
 「…こいつは12年前、世界を混乱させた『闇の現事件』を起こし、『闇の根源』『闇司祭』と呼ばれて恐れられた魔法使いです!それが何らかの理由で封印が解けてこうして再び現れたんです!」
 「ねぇ、本当…どうしてなんだろうね?」
 頭上からブランクの余裕な声が振ってくる。知っているのに自分はさも何も知らないという様子がやたらに憎たらしく、同時にひどく恐ろしかった。ブランクがとこまで知っていて、何を企んでいるのかが何一つ読み取ることが出来ない。
 「世界中が嘆きや怒りで包まれた『闇の現事件』は国王や王妃から聞いてご存知でしょう!?それが再び起こり得てしまうかも知れないんです!そんな膨大な力を持つ相手に、俺たちがどうこう出来るハズがない!」
 もう無我夢中だった。
 「世界の均衡が乱れたのも、たぶんこいつの封印が解けたことが原因です!だからミシロ王女も…!」
 だからこそ、ひどく後悔をした。
 コロナはブランクの恐ろしさと危機的状況を伝えようとした。しかし最後の一言は、明らかにトーンの大事な部分を強く攻撃していた。
 「……ミシロ…を…?」
 その一言はとても虚ろだった。
 嘘だ、と疑う訳でもなく、そうだったのか、と怒るようすもない。
 ただ耳から入った音を、ただ口に出しただけだった。
 「…ミシロを…眠らせたのは……君…なの…?」
 ブランクは笑った。それがすべてを物語っていた。

 灰色がかった黒い大きな瞳が見開かれる。けれどもそこに普段のキラキラとした輝きはない。あるのは驚きと疑いと怒りと深い深い、悲しみ。
 「…返してよ…」
 ざわ…と夜の冷たい大気がざわめく。コロナは「止めろ」と制止の言葉を口内で呟く。しかし、もうすべて遅かった。

 「…ミシロを返してよっ!!」
 
 涙が溢れて止まらなかった。



* * *



もっと…なんというんでしょうか、行を開けなくても雰囲気のある文章を書きたいなと強く思ったりします。
佳境っぽい感じなので、きばってきます!
もうなんというか、番外編の方々が凄いので、うかうかしていられないなと思っていたりするんですよ(それはお前が文章下手だからだろ/すんません)
という訳でがんばります?

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旅戦の王女 第37話『籠の少年。青空目指して20』

 圧倒的な威圧感がそこにはあった。
 何もない虚無のようでありながら、絶対にそこに『いる』という存在感と力。それが渦のようにして青年を取り巻いている。
 コロナの焦りと緊張感をよそに、突如空に現れた黒服の青年はあくまでも緩慢な動作で辺りを見渡す。ぐるりと自分の左右を見回し、それからおもむろに足元を見る。ワンテンポ置き、
 「……あぁ…」
 今しがた気づいたように小さく言葉を漏らした。
 あまりにもローテンポぶりに拍子抜けしたくもなるが、青年から出る力は先ほどから一切変わらずに禍々しく放出されている。
 「すぐ気づかなくって、ごめん」
 青年は子供のような悪戯っぽい笑みを浮かべる。
 それから青年は空気を感じさせない動作で右足を一歩、前に出す。出された右足は宙を掻き、一段下がった位置を踏みしめる。そして更に左足を一歩、右足よりも更に一段下がった位置に置く。夜空の、何もないところを、まるで階段を降りるかのように進んでいく。
 とん…とん…と青年は悠々とした姿で夜空を一段一段降りて行った。
 ―…とん…
 青年はトーンの目の前、地上から30センチほど浮いた位置で立ち止まる。
 トーンが顔を上げるのが見えた。青年もトーンの顔を見下ろす。
 二人が対峙している様子をコロナはじっと見つめる。頭の中で逃げ道までの距離と時間、左後方に置いてある四輪駆動車の車内にある魔法書を取りに行ける時間と、魔法発動までの時間を必死に計算し、組み立てる。
 ―すっ…
 青年は右手を突き出した。反射的にコロナは飛び出そうと一歩踏み出す。が、その右手はトーンに触れる前に青年の腹部へと弧を描いて戻り、
 「…ようやく逢えたね」
 嬉しそうに膝を折り、
 「…モノケディア王国の黒き王女」
 恭しく、頭を下げた。

 「…どうして…僕のこと…?」
 トーンは大きな黒い瞳を更に丸くさせ、状況に似つかわしくないきょとんとした様子で聞き返す。青年はにっこりと微笑む。
 「…驚いた?」
 穏やかではあるが、誰も近づけることのない笑み。
 青年は再び夜空を仰ぎ見るようにゆったりと物思いに耽るように呟く。
 「ようやく逢えた…とても長かったような気もするし、そうでない気もする。何もない空白を彷徨い続けて、こうして、再び帰ることが出来た。…俺がいるべき世界…俺が帰るべき世界…」
 遠い昔を懐かしむような言葉。青年の色の違う瞳は夜空を見ていながらどこか別の場所を見ている。言葉一つ一つかみ締めながら、とても幸せそうに、どこか物悲しそうに。
 「…君は…誰なの…?」
 トーンは問いかけに、青年はトーンの黒い瞳を見つめた。

 「12年前の魔法使い…と言えばわかるかな?」

 ―ざっ!
 反射的にコロナはトーンと青年の間に立ち、両手を広げて庇っていた。
 「…12年前の魔法使いは封印されたハズだ…いるはずがない」
 コロナは上目遣いで青年を睨み返す。しかし青年はそんな睨みなど一切通用していないのか、余裕な笑みすら浮かべる。
 「『封印された』だろう?『倒した』訳じゃない。…それに…」
 青年の右手が勢い良く伸ばされ、コロナが身に着けている金色の首輪を掴む。そしてそのままぐいと引き寄せ、鼻先が近づくすれすれのところでコロナと青年は対峙する。
 「…もう気づいているだろう…?…『賢者』様…?」
 青年が唇を釣りあがらせる。
 「………」
 そう、コロナにはわかっていた。
 青年が放つ禍々しいまでエネルギーと威圧感、世界でも指折りの賢者である祖父からも感じたことのない魔力。そんな大層なものをすべて持ち合わせている人物は、この世界に一人しかいない。
 「……12年前の…『闇の現事件』の魔法使い…!」
 「『ブランク』でいいよ」
 ―長い空白(ブランク)を生きてきた俺にはおあつらえ向きだろう?―コロナの耳元で『闇の現事件』の魔法使い―ブランクは呟いた。



* * *



なんというか…かんというか…ごめんなさい!(スパイラル土下座)
ナジスコさんマジでごめんなさい!;
なんかもう、好き勝手やっちまってごめんなさい!
ブランク君を書くとき、普段のブランク君の性格で書いていたらなかなか筆が進まなかったのですが、黒様に変えた途端すいすい筆が進みました(おーう)
ということで闇司祭ブランク君は黒様で行きます☆(てめぇ)

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旅戦の王女 第36話『籠の少年。青空目指して19』

 (…いや、違う…!)
 コロナは本能的に感じ取る。
 あれは光っているのではない。あそこだけ夜空が『ない』のだ。
 どのような状態かも原理かもわからないが、ただ白いだけの空間がぽっかりと空いている。それが浮いているように見えるため、まるで光っているかのような錯覚を起こしたのだ。
 自然学的にも魔法学的にも在り得ない光景に、コロナはその空間を凝視する。するとその空間の周りの夜空に小さな切れ目が入り、細かなブロック場にになって少しずつ消えていく。
 白い何もない空間が広がっていく。
 「………」
 トーンもその光景をただ見ていた。恐れているのか驚いているのか、後ろにいるコロナにはうかがい知ることは出来なかった。

 やがて白い空間は大人が一人余裕で通り抜けられるほどの大きさにまで広がる。
 何もない空間。
 本来ならば深い闇の色を称えた夜空がそこにあるべきハズなのに、まるで切れ味のいいハサミで切り取ったように何もない。
 ―すっ
 「…!」
 突如何もない空間から何かが飛び出してきた。―人間の手である。黒い袖をの服を着た、若い人間の右手。
 コロナはごくりと固唾を飲み込む。先ほどから感じる禍々しい魔法の力が、ビリビリとなおも体を突き差してたまったもんじゃない。冷や汗が頬を伝い、ポタリと地面に落ちる。
 何もない空間から突き出た右手は感触を確かめるかのように、手のひらを握ったり開いたりする。そして何かを感じたのか、右手の次は左手を突き出した。右手と同じように握っては開き、何かを確かめている。
 「………」
 嫌な予感が脳裏をよぎる。あまりにも緩慢な動きに、ずっと構えた体制で待っているコロナの筋肉は強張って痙攣を起こしそうになる。けれども緊張を解くことは許されない。そう、この場の空気は言っているのだ。少しでも気を緩めたらお終いだ、と。
 トーンもただ見ていた。あれほど騒ぐことの好きなトラブルメイカーなのに、まるで微動だにせず、じっと事の顛末を見据えている。
 ―すっ
 次に右足が出る。黒くて長い裾を引きずった…まるで賢者の服装と正反対の色合いをした衣装で現れる。右足を何もない空中で踏み留め、次に左足が出る。
 ようやく全貌が明らかになった。
 「…え…?」
 現れたのはすらりと背の高い、20代前後の青年であった。茶色の長めのショートヘアーに黒い衣装。黒い線が入った長くて白い布を肩にかけ、胸には見たことのない装飾品をつけている。
 両の瞳は閉じているが、鼻筋の通った端正な顔立ちをしていた。
 一見すれば線の細い、細腕の青年である。しかし、先ほどからコロナが感じている禍々しい力は、明らかにこの青年から発せられていた。
 「………」
 青年は静かに瞳を開いた。
 ―深い済んだ紫色と、冴え冴えとした金色の、二つの瞳を携えていた。

 「…うわっ!」
 途端、力が暴風となって辺りに吹き付ける。砂埃を舞い上げ、コロナとトーンを飛ばすかのように容赦なく吹きすさむ。二人は両腕で顔を隠し、足腰に力を入れて必死になって耐えた。
 やがて風は収まり、コロナとトーンはおそるおそる顔を上げる。
 「………」
 青年はただ立っていた。夜空に立ちながら、髪の毛一本たりとも風の自由にさせることなく、悠々とそこに存在していた。まるで最初からそこにいないかのように。いや、逆に彼が世界の中心であるかのように、必然的に。
 ふと青年は空を仰ぎ見るように首を少しばかり仰け反らす。
 「………」
 そしてゆったりと口元を緩め、目を細め、
 「………」
 穏やかに、ひどく愛おしそうに、
 「…ただいま…俺の世界…」
 呟いた。



* * *



ということでようやく出せましたーっ!名前はまだ出ていないですが、闇司祭、ブランク君です!
本当は『扉』使って出てくる予定だったのですが、ブランク君らしさを出すことと、インパクト重視と、ゆかりんファンタジアに感化されて(え?)何もない空間から登場していただくことに…。
いよっし、次からバトルじゃあー!(その前に前ふりで終わりそうな気もするけど…;)

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旅戦の王女 第35話『籠の少年。青空目指して18』

 「…そ、空…?」
 突拍子もない大まか過ぎる答えにコロナは素っ頓狂な声を出す。しかし答えたファルルは大真面目で、漆黒の猫目をカッと見開き、
 「うん!空!」
 ずばりそのまましっかりと断言した。
 コロナは返答に困った。あまりにも壮大であることと、『あの空の下』という具体的な場所やイメージがよく理解出来なかったからである。
 「…だってほらっ」
 答えようとしないコロナに痺れを切らしたのか、ファルルは片手を高く上げ、ぐるりと大きく円を書くように回す。指先がちょうど訓練施設を覆う塀をなでるようにして一周する。
 「…高い塀だろ?ここには自由がないんだよ」
 ファルルはふてくされたように呟く。確かにその通りである。この訓練施設の隔離振りは少し大仰とも思えるほど徹底している。
 「うん、そうだよね。…僕も入るとき少し怖かったし…」
 トーンが素直な感想を漏らす。まるで大地から競りあがるような大きな塀に厳重な警備。遠くから見てもそれだけで敵が去るような、十分な威圧感がある。
 普通の人でそれなのだから、ファルルのように遊び盛りの少年となると、自由がないこの場所はある意味地獄に近いところかもしれない。
 (でも、少しおかしくないか?)
 疑問が頭を通り過ぎ、コロナはおもむろに言葉にする。
 「…ここは強制施設じゃない。この施設に入ることが出来るのはモノケディア王国を慕う愛国心のある人物だけだと…」
 そう聞いているが…とコロナは付け足す。
 ゴーファン隊長から聞いている限りはそのようだし、他の兵士もどうやら愛国心は人並み、もしくはそれ以上のようだ。訓練施設がそういう方針である以上、ファルルが嫌々ここにいるということは考えづらい。自分で志願したか、もしくはそれ相当の出来事があるハズなのだ。
 「………」
 ファルルは口をつぐむ。どうやら図星だったのか、あれほど真剣だった瞳を伏せ、斜め前へと泳がせている。
 (…やれやれ)
 その様子にコロナは肩をなでおろす。
 志願したはいいがあまりの辛さに嫌気が差したか何なのか…少年にありがちな単純な心変わりである(少年のコロナがそう言うのもおかしいが)そんな曖昧な理由で旅に同行されては困る。
 「…暗くなりました。部屋へ戻りましょうか」
 コロナの問いかけに、トーンははっと顔を上げる。
 傾き始めた太陽は塀の向こうに完全に隠れてしまい、若干西側の塀がオレンジ色になっているが、空にはもう星が輝き、月も薄ぼんやりと光始めている。
 隊長のゴーファンから来客用の部屋(おそらく応接室と同じく急遽掃除した部屋だとは思うが…)を教えてもらっていたことを思い出し、コロナはそこに行くようトーンに働きかける。
 「……でも…」
 トーンはコロナとファルルと夜空を交互に忙しなく見つめ、懇願するような声を出す。どうやらまだファルルが仲間にならないことに未練があるらしい。
 「…トーン」
 再度の呼びかけに、トーンは渋々体の向きを変える。その様子に、コロナは後ろからゆっくりと白い裾をなびかせてついていく。
 「………」
 帰っていく二人の様子を、ファルルはじっと見つめていた。そこにあるのは悔しさでも憎しみでもなく、ただもどかしさがあるような、深いジレンマを含んだ表情であった。

 数歩歩いたところで、
 「……っ…」
 トーンは唐突に止まった。後ろを歩いていたコロナもそれに合わせて止まる。
 「……トーン…?」
 まだファルルにも声が届く位置だっただけに、コロナは声を抑えて偽名で呼びかける。呼びかけられたトーンは何も答えず、ゆっくりと頭をあげる。
 「………」
 濃灰色の夜空を仰ぎみる。トーンの大きな灰色がかった瞳に星が一つ二つと映り、短い猫っ毛の毛先が肌寒い冬の風にそよそよと流れる。
 何か見えているのだろうか?そう思いコロナも神経を研ぎ澄ませ、トーンと同じ方向の夜空を見上げる。深い深い漆黒ともまた違った不思議な色合いの冬の夜空。首を仰け反らせて見上げていると、まるで夜空に落ちていくような錯覚に陥る。
 ―ざわっ!
 「…!」
 途端、コロナの背筋に寒さとは違う嫌な寒気が走った。背筋はどんどん冷たくなるのに、夜空の側に向けていた腕や肩にじわじわと熱が帯び始める。電気信号を間違えているかのように背筋が凍るほど他の部位は熱く、ビリビリと皮膚が焼けるように痛みさえ伴ってくる。
 (…これは…)
 城内の礼拝堂の扉を開けるとき、あの意地悪な大賢者によって妨害されたときのことを思い出す。しかし、この寒気と熱さはその比ではない。
 「……来る…」
 トーンは小さく呟く。
 目線の先の夜空の間で、わずかな光が輝いたのが見えた。



* * *



ファルル君仲間フラグを勝手にもぎ取る、嫌な賢者・コロナ。
そしてラストでちょびっと、というかいよいよ?あの方が登場?的な?
というかここまでこぎつけるのが長かった;

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旅戦の王女 第34話『籠の少年。青空目指して17』

 「ミっ…と、トーンっ!降りてくださいっ!」
 コロナはよたよたとふらつきながら両手を挙げ、上に乗っているトーンをなんとしても下ろそうとする。しかしトーンはコロナの頭にしっかりとしがみつき、一向に離れそうにない。
 「ファルル強いよ!だってさっきも凄かったもん!」
 トーンはにこにことした表情で答える。コロナは二人の立ち合いをしっかり見た訳ではないのだが、どうやらとても楽しかったらしい。目の前のファルルも嬉しそうに無邪気に笑っている。
 「えへへっ…トーンもなかなかだったよ」
 その言葉に頭上から照れたようにてへへーという笑いが降ってくる。
 ちょっと目を離した隙に…ずいぶんとまぁ仲良くなってしまったものだとコロナは呆れを通り越して少し感心してしまう。が、
 (…お、重い…)
 トーンがいつまでも頭の上から退こうとしないためか、いい加減膝が笑いだしている。ガタガタ震える膝を必死に抑え、トーンが落ちないようにコロナは精一杯踏ん張る。
 「だから一緒に旅したらきっと楽しいし、頼もしいよ!…ね?一緒に行こう!」
 トーンがすっと右手を差し出す。ファルルの表情にぱあぁと光が灯った。
 「…ありがとなっ!」
 ファルルも右手を差し出し、互いの手をしっかりと握り締める。がっちりと握手が交わされ、決意を新たにする。こうして仲間にファルルが加わり…
 「…って、まっ…て…?」
 コロナが意義を申し立てようと片腕を上げた瞬間。トーンの重さに耐え切れられなくなったのか、重心がズレたのかわからないが、それまで全体重を支えていた膝から下の力がガックリと抜けた。
 「あ」
 結果、
 「うわああぁっ!?」
 耐え切れずに二人とも折り重なるようにして地面に倒れた。

 「だ、大丈夫かっ!?」
 突然目の前で崩れた二人に、ファルルも驚いて覗き込む。
 「…大丈夫?…」
 ファルルの問いかけに、トーンは失敗しちゃったぁというような軽い笑顔で返す。見る限り、怪我も何も負っていないようだ。しかし、
 「……えっと…そっちは…?」
 申し訳なさそうにファルルの視線がトーンの下に行く。視線の先には、トーンのお尻の下で潰れたカエルのようにピクピクと痙攣運動をする、哀れなコロナの姿があった。
 「……大丈夫…じゃない…」
 地面にうつ伏せになったまま、恨みがましい声が聞こえてくる。
 コロナはトーンを下敷きにしてはなるまいと反射的に前のめりになり、結局地面にうつ伏せで倒れこんでしまったのだ。口の中に感じる砂利の味に顔をしかめながら、四輪駆動や馬車で轢死するというのはこういう心持なのかと妙なところで納得していた。
 「わぁっ!コロナ大丈夫!?」
 それまで悠々と座っていたトーンが下敷きになっているコロナの存在に気がつき、飛び跳ねるようにして立ち上がる(薄情者…)しかしこれ以上「大丈夫じゃない」と意地を張るのもなんなので、
 「…大丈夫です…」
 体裁がてらにそう答えた。
 ゆっくりと立ち上がってみると、あちこち小さなスリ傷は出来ているものの、捻挫や骨折などの大きな怪我はしていないようだった。傷自体も、簡単な回復魔法ですぐに治りそうである。
 ―しかし今の問題にすべきことは怪我ではない。
 「…トーン…」
 コロナの音量を抑えた声に、トーンはびくりと肩を震わせる。このように話しかけるときは大概真面目で、なおかつトーンにとって不利な話をするのだと気づいていたのだ。
 「…俺の意見を無視して勝手に決めないでください…」
 断るつもりでいたのに…とコロナは顔を背ける。しかしトーンはこの言葉にぷぅと頬を風船のように膨らませ、
 「だってファルル強いからいいじゃん!一緒で!」
 ふてくされたように言い放った。
 あくまでもだだっ子のようなトーンの態度に、コロナは呆れて軽くため息をつく。
 「…遊びに行くんじゃないんですよ?…それに…ファルル…」
 「え?」
 唐突に話を振られてファルルはびくっと顔を上げる。コロナは眉をひそめ、やや怪訝そうな顔で問い詰める。
 「…どうして旅に同行したいと思ったんだ?他の兵士や隊長と違って、モノケディア王国のため…とか考えている訳ではないようだし…」
 コロナの質問に、ファルルは唇をかみ締めて押し黙る。表情は険しく、言いづらい内容ではあるが、絶対の意志は強く感じる。

 「……外へ…」
 わずかな沈黙のあと、ファルルは小声で言った。
 「…外へ…あの空の下へ行きたいんだ…」



* * *



な、なんか駆け足のせいかいつになく支離滅裂文章に…;(はわわ;)
次でファルル君の動機付けをはっきりとさせて、それから出来ればもう一人、ゲスト様を出したいところ…。
いよいよあの方が登場です!

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旅戦の王女 第33話『籠の少年。青空目指して16』

 トーンの叫びに少年はぎくりと肩を振るわせたが、これ以上誤魔化せないとわかったのか、肩を丸めながらおずおずと出てきた。
 (…彼は…)
 最初見たときは気がつかなかったが、トーンと剣の立ち合いをしていた少年だとコロナもようやくわかった。
 (…ファルルというのか…)
 名前は知らなかったが、あの冴え冴えとした深緑色の長い髪は印象にある。そんな少年が、どうして隠れるようにしてこちらをうかがっていたのだろうか?
 「どうしたの?ファルル」
 どこか落ち着かない様子のファルルにトーンが問いかける。
 「…いやぁ…」
 その問いかけに対し、ファルルは照れ隠しの笑いを見せる。後ろ頭を片手で掻きながら、曖昧にうぅんだのあぁだの言ってお茶を濁している。
 (…まさか…)
 ―もしかして今の一連の様子を見られていたのではないだろうか?
 コロナの脳裏に嫌な予感が過ぎる。妖精のプラチナが見られたのだけならまだしも、『トーンが実はミクロ王女である』ということまで聞かれていたのならばさすがにヤバイ。こればかりはコロナも迂闊だったが、何度も「ミクロ王女」と大きな声で呼んでしまった気がする。
 ファルルが何を言い出すかとコロナは内心ハラハラしながら見ていると、
 「……あの…」
 彼は小さく口を動かした。コロナは条件反射でとっさに身構える。
 言い出すか言い出さないか迷っていたのか、一度は目線が泳いだものの、すぐにファルルはキッと顔を上げてコロナの元に駆け寄る。コロナのすぐ目の前まで来ると立ち止まり、背筋をしっかりと伸ばして、
 「お願いしますっ!!」
 電光石火の速さで頭を下げた。
 「え?えっ!?」
 予想外の行動にコロナは驚きを隠せずにひっくり返った声を出す(ってさっきもこんなことなかったか!?)そんな不可解なデジャヴもあいまってコロナの混乱は頂点を極める。しかしファルルの漆黒の瞳はコロナの姿を真っ直ぐ見つめ、
 「賢者さん!俺を旅に連れてってほしいんだ!」
 力強くハッキリと言い放った。
 「…え?」
 コロナはきょとんと目を丸くする。しかし堰を切ったファルルの勢いは止まらない。
 「賢者さんが旅のお供を探しているって隊長から聞いたんだっ!だから俺をそのお供にしてほしいんだよ!外に行って見たいんだっ!俺、がんばって戦うからさ!」
 「ちょ、ちょっと待て…」
 前のめりになって早口でまくし立てるファルルを両手の平で抑える。それでも興奮冷めやらないのか、ファルルは大きく肩で息をしながら、しっかりとコロナの顔を見据えている。あまりにも真っ直ぐな視線なばかりに、コロナは気圧されそうになる。
 「…その…つまり…」
 ゆっくりと言われたことを頭の中で整理をしながら意味を咀嚼していく。
 「…俺…たちの旅に…同行したい…ということか…?」
 その言葉に、ファルルはこっくりと大きく頷いた。
 「………」
 コロナは悩んでいた。
 これだけの熱意は有難い。やや動機に不純なものを感じるが、この漆黒の瞳に嘘偽りは存在していない。『旅に出たい』という強い意志が手に取るようにしてわかる。しかしファルルはどう見てもコロナたちと同じ、もしくは少し上か…つまりはまだ子供である。この先に何があるのかわからない以上、しっかりと武術を身に着けた熟練に来てもらいたいのが本音である。
 「……申し出は嬉しいが…」
 悩んだ末、コロナは断ることにした。ただでさえ旅には戦いも何も知らないトーンがいるのだ。その上更に少年を一人連れていくなんて、考えただけで無謀だ。コロナは魔法に少なからずの自信はあったが、それでは不十分である。誰かがしっかりとトーンを守ってくれなければ意味はない。
 「…連れていけ…ん?」
 断りの言葉を言おうとした瞬間、コロナは肩から頭にかけて、突然ずっしりとした重みを感じた。何事かと顔を上げようとした瞬間、
 「うわっ!?」
 ぐいと強い力で頭を押さえつけられ、コロナは強制的に前かがみ状態になってしまった。不自然な重みと不自然な体制によろよろと足元がおぼつく中、
 「いいよ!一緒に行こうよ!ファルルっ!」
 コロナの頭上から元気のいい声が聞こえてきた。



* * *



今日は授業中寝なかったので、ちょっとがんばって連続アップと行きたいです。
ってか短いですな…;

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旅戦の王女 第32話『籠の少年。青空目指して15』

 「…ふぅ…」
 今日何度目か(数えてないのでわからない)のため息が出る。
 人間は『扉』を潜り抜けることは出来ないので、直接怒鳴り込みに行くことは出来ないし、もし行けたとしても、あの大賢者様のことだろうからそうやすやすと姿は現さないだろう。
 ここは妥協せざるを得ない。
 「…大体のことはわかった…。…じゃあ俺からの言伝を大賢者様に伝えておいてくれ」
 その頼みに、プラチナは「はいはーい!」と元気良く答える。プラチナの同意が得られると、コロナは少しばかし目線を動かし、慎重に言葉を選んだ。
 「……『貴方のことでしょうから全部ご存知かと思われますが…ミクロ王女は俺のところにいます。適当な理由をでっち上げて事態を正当化されるよりも、早々に迎えを寄越して王女を無事に城へ帰らせて頂くことを期待しております』…」
 ムカついた相手に対し、これでもかと丁寧な回りくどい言い回しをするのはコロナ流の皮肉。もちろん、この皮肉が大賢者に通じた試しは、ない(おそらくわかっているのだろうけれども飄々とかわしてしまう)
 それに気づいていないプラチナはうんうんと頷き、
 「わかった!しっかり伝えておくからね!」
 ぐっと拳を突き出し、頼もしい笑顔を見せてくれた。

 ―ひゅうっ…
 「…っ…」
 トーンは突然吹き込んできた冷たい風に、思わず身震いをした。その様子を見ていたコロナはおもむろに空を仰ぐ。
 それまで空高く輝いていたと思っていた太陽は大きく西に傾き、薄く延びた雲をオレンジ色に染めあげている。東の空は深い紫色に染まり、一つ二つと星が姿を表し始めている。
 「暗くなってきたねぇ…」
 まだ少し寒いのか、トーンは自分で自分を抱きしめるように両腕をしっかりと抱え、ポツリと呟いた。
 「…そろそろ訓練兵たちが帰って来る頃か…」
 トーンに呼応するように、コロナも小さく呟く。
 二人の様子にプラチナは伸びをしながら、
 「じゃあ、私はそろそろ帰るね」
 そう答えた。
 『妖精族』は人間に友好的な種族なだけに、獣人や他の種族のように決して珍しい存在ではない。しかしこの訓練施設ではまた別だ。コロナが入るときに、事前に連絡を受けていなかったトーンを入れるのにかなり渋っていた。隔離された施設なだけに、どうしても外部からの人間には警戒をしているらしい。
 だから今プラチナを見られてしまったら、三人揃って追い出され兼ねない。
 「…わかっ…」
 「えーっ!?プラチナちゃん、もう行っちゃうの?」
 コロナの頷きを遮り、トーンは身を乗り出して叫んだ。眉を大きく下げ、今にも泣きそうな表情。するとプラチナは最初逢ったときのようにトーンに抱きつき、
 「また何かあったら呼んで!そうしたらまた来るから!」
 そう言い聞かせた。トーンもその言葉と抱きしめられた暖かさに、同じようにぎゅーっと抱きしめ返し、
 「…うんっ」
 笑顔で頷いた。
 トーンはミシロが眠りについたことで、どこかで人との別れを怖がっているようだった。それが一瞬の別れであっても、不安で仕方がない。「おやすみ」と昨晩言ったのに、次の朝に「おはよう」が言えなかった。それは彼女の心の奥底で今も悲しみとなって溜まっている。
 「バイバイっ!またね!」
 プラチナは魔法陣の上に浮かび上がる『扉』に手をかけ、最後に笑顔で手を振った。トーンもバイバイと腕が引きちぎれる勢いで手を振り替えした。
 『扉』がゆっくりと開き、プラチナはその向こう側へ潜り抜けていく。流れるような細いブロンドの髪が尾ひれのように吸い込まれ、『扉』は閉まった。
 わずかな静寂。
 地面に描いた魔法陣はすでに光を失い、まるで子供の落書きのように、ただそこにある。
 コロナはトーンの後姿を見ていた。小さな小さな後姿。そこにあるのは王女としての威厳でも気高さでもなんでもなく、年相応の少女の淋しさである。
 本当ならば大賢者に連絡を取り、トーンを迎えに来てもらう予定であった。しかし、プラチナの話によれば、ミクロ王女は城にいないことになっている。帰りたくても帰ることの出来ない状態。でもだからと言って、このまま旅に同行させるのも危ない。
 「…コロナ」
 唐突に呼ばれてコロナは我に返る。見ればトーンはこちらに振り返り、コロナの深い緑色の瞳を見つめている。
 「…な、なんですか…?」
 少しおどおどした様子でコロナは答える。真剣な灰色がかった大きな黒い瞳。息をつくことすら許されないほど強い眼力でトーンはコロナを見つめ、
 「これからもよろしくお願いしますっ!」
 ぺこりといきなり頭を下げた。
 「…え?えっ!?」
 あまりにも突拍子もない行動に、コロナはひっくり返った声を出す。けれどもトーンはまったく動じずに、むしろ嬉しそうに言い出す。
 「だって僕は『避難』しているんでしょ?だからお城に帰れない…だったらコロナの旅についていくしかないでしょ?だからよろしくっ!」
 にこっと眩しい笑顔と強引なまとめ方にコロナは飽きれる。またもや痛くなってきた頭を抑え、なんとしても断ろうと模索する。
 「…いえ、でも危ないですし…」
 「大丈夫だよ!」
 何を根拠に大丈夫なのかぜひとも小一時間は問い詰めてみたい。
 「…万が一のことがあったら…」
 「大丈夫だもん!」
 ありきたりな文句はすべて『大丈夫』で押し切られてしまう。どうしたものかと視線を泳がせる。ぴょんぴょんと目の前で跳ねるトーンをなるべく視界に入れないようにきょろきょろと首を動かし、色々な意味で逃げ道を探す。と、
 「あ」
 どちらともなく声が出る。
 コロナの視線の先、建物の影に人の姿。こちらの様子をうかがっているのか、壁に隠れるようにして立っている。
 コロナたちと同じくらいの年の少年で、深緑の色をした長いポニーテールに猫のような黒い瞳の、
 「ファルルっ!」
 トーンが叫んだ。



* * *



はい、ここでプラチナちゃんとしばしのお別れです。
そしてファルル君、再登場!
こっからぐわぁーと行きたいところです。

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旅戦の王女 第31話『籠の少年。青空目指して14』

 「つまりその…なんだ…えぇと…」
 自分たちが置かれている状況。プラチナの言葉の真意。陰湿大賢者の意向。それらを再編集して最も理解できるように道筋を立ててみるが、駄目だった。
 だってどう考えてもおかしい。
 プラチナが、『トーンの正体はミクロ王女』ということを知っている。というのはすなわち、『黒の王女・ミクロが現在、モノケディア城にいない』という事実が広く認知されてしまっているということになる。
 (…それでどうして騒ぎにならないんだ…?)
 ―白の王女・ミシロが眠ってしまっている今、もう一人の黒の王女までもが行方不明になる。
 こんな最悪なシナリオはない。いくら国中が大騒ぎになるとはいえ、兵団の一つでも出して捜索に当たるハズである。そうなればこの訓練施設にだって連絡は行くハズだ。…ハズなのだ。
 「…はぁ…」
 どう考えてもわからずに、コロナは深くため息をついた。
 まるでメビウスの輪の終わりを探すような気分である。そういう延々と答えの出ないことをぐるぐると考え続けることは嫌いではないが(前に自分が死ぬときのことを考えてみて、偉く不快な気分になってしまったことがある。もうやらない)それはあくまで暇なとき。考えるテーマもとても壮大かつ、検討のつかないものに限る。こんなやたらと現実味があるくせに、意味がさっぱりわからないテーマはごめんだ。
 「幸せが逃げるよ??」
 そんな複雑なコロナの脳内なんて露と知らないトーンは、相変わらずすっとぼけたことを言ってきた。いつの間にか抱き合うのを止めたのか、至近距離でコロナの顔を覗き込んでいる。もちろん考えすぎて脱力したコロナに、そんな脅しは通用しない。半眼でじろりとトーンを見返し、
 「……そんなの迷信です…」
 吐き捨てるように言った。神を信仰する賢者にしてはあまりにも冷めた言葉に、トーンはぷぅーと頬を膨らませる。
 「もぉ!なんか頭抱えてうんうん唸ってておまけにふぅーなんてため息ついているから励ましてあげたのにぃー!」
 ぷんすか頭から湯気をだし、両手をぶんぶん振っていちゃもんつけてくる。益々痛みが増してくる頭を抑え、
 「…余計なお世話で…」
 「そうだそうだー!元気だすんだー!」
 突っ返そうと思った瞬間に、今度はプラチナまでもが悪ノリして言ってくる。
 今の状態は2対1。明らかに不利である。
 「…わかった…わかりました…」
 コロナはお手上げのポーズをしてみせ、観念したと頭を横に振る。するとトーンとプラチナは勝ち誇ったようにお互い、にこにこと笑い合う。そんな微笑ましい二人を見つめ、コロナはため息混じりに呟いた。
 「……わかったから…説明してくれ…」
 「ん?」
 コロナの言葉に、プラチナが小首をかしげる。また言葉足らずだったかと口を開こうと思ったとき、
 「私がミクロちゃんのことを知っていたこと?」
 ずばりプラチナは言い当てた。
 「…あ…あぁ…」
 説明の手間が突然省け、コロナは肩透かしを食らったような声で頷く。
 その様子に、プラチナはまるで光が弾けたように眩しいくらいの愛らしい笑顔を見せた。
 「やっぱり!大賢者様の言っていた通りだねっ!」
 再び出された名前に、コロナはむっと眉をひそめる。しかし例によってコロナの表情の変化というのは周りから見ると微々たるもので、プラチナは気づかずに訳を話した。
 「相手しておけって言われたあとに聞いたんだ。『どう相手すればいいんですか?』って。そうしたら、『ミクロ王女様不在のことについて話せばいい』って」
 だから説明するねっ!と、言ったプラチナの笑顔は爛々と輝いている。ずばり思っていることを言い当てられたのだから、そりゃあ気持ちがいいに違いない(言い当てられたコロナとしてはかなり複雑だが)
 「あのね、ミクロちゃんはお城では『避難』されてることになってるの」
 「ひ、ひなん…?」
 突然出てきた単語に、コロナだけではなくトーンまでも驚く。
 「…僕…何から避難してるの…?」
 自分のことを聞くのもなんだか変な気がするが、プラチナは丁寧に説明してくれた。

 ―つまり、白の王女と黒の王女は対なる存在なのだ。
 それは王族だけではなく、モノケディアの賢者ならば誰もが知っていることである。白と黒。光と闇。善と悪。世界中に存在するすべての二対を表す象徴。それがミシロ、ミクロ、両王女なのである。
 ミシロ王女が突然、深い眠りについてしまった。それはどこかしらでその二対のバランスが崩れてしまったことによるものだと、賢者たちは推測している。
 もちろんただの病気の可能性も捨てきれていないのだが、今の状況を考えると前者の率が高い。
 なぜ世界のバランスが崩れたのか?その理由はまだわからない。理由がわからないということは、対処のしようがないということでもある。
 ここで気になるのは、もう一人の王女、ミクロの安否である。
 片割れであるミシロ王女が眠りについてしまったことで、何か異変があるかもしれない。だとしたらあまり二人を近づけすぎてしまうと、影響が強く出てしまうかもしれない。
 「…って大賢者様が王様に言ってね。それで『ミシロ王女が目覚めるまでミクロ王女は避難させていただきます』…って」
 「………」
 コロナはプラチナの話を聞き、理解したこととそうでないことがある。
 理解したことは、ミクロ王女不在が怪しまれない理由について。
 確かに対なる二人のうち一人が倒れてしまったのだから、影響が出ないように二人を離しておくことは得策かもしれない。
 理解できないことは、なぜ大賢者がそのようなことを言い出したのかということである。
 先の未来を見通すことの出来る大賢者にしてはあまりにも曖昧な発言である。しかも大賢者は飄々としているように見えて、実はかなりの堅実主義なのだ。そんな人がミクロ王女不在を黙認した挙句、まるでフォローするかのようにもっともらしい理由づけまでするだろうか。
 (あのアホじじいめ…)
 胸中で悪態をつく。
 思えば最初からおかしかったのだ。ミシロ王女が眠りについたことに関して、自信がないかと思いきや、やたらと周囲を不安にさせるような発言。ほぼ無理矢理と言っていいほどコロナを旅へ行かせ、更にミクロ王女がその旅に同行するのを知っていたかのような理由付け。そして当の本人は雲隠れ。
 「…大賢者様はどうしても出て来られないのか?」
 コロナの問いかけに、プラチナはこくりと頷く。
 (…色々問い詰めてやりたいのに…)
 与えられた情報の少なさに、コロナは憤りすら感じていた。



* * *



な、長くなってしまいました…;
要はミクロ王女いないのに城では何の騒ぎにもなってないんだよっ!という素朴な疑問に答えるための話です。
ま、前置きがやたらと長くなってしまいましたが…;
大賢者様がかなり謎めいてまいりました。
…次辺りで場面転換したいです…。

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旅戦の王女 第30話『籠の少年。青空目指して13』

 「…改めて聞こう……お前の名前は?」
 「妖精族のプラチナ!よろしくね♪」
 トーンに抱きついたまま、妖精・プラチナは笑顔で元気よく答えた。最初こそ戸惑っていたトーンだが、抱きつかれて悪い気はしていないらしく、
 「ぎゅー♪」
 「ぎゅー♪」
 などと言ってお互い抱き合っている。
 (ノンキだなぁ、おい)
 女の子二人が仲良くじゃれあっているという、傍から見ればとても微笑ましい光景を目の当たりにして、コロナは軽い頭痛を覚えて首を振る。しかもまだ肝心なことを聞いていないことに気づき、コロナはプラチナに再度問いかけた。
 「…大賢者様は…?」
 コロナの質問に対し、プラチナが「え?」と顔を上げる。言葉足らずだったと思って更に付け足す。
 「…俺は大賢者様と連絡を取るために『扉』を開いたんだ。…それなのにどうしてプラチナが出てくるんだ…?」
 その問いかけに対し、プラチナはう?んと小首をかしげ、
 「…大賢者様はご多忙のため留守……?」
 「ちょっと待て」
 素早さには自信のないコロナから、間髪入れない華麗なる突込みが入る。大体、どうして自分で言っておいて語尾にハテナマークがつくんだ?
 「んー…だって…」
 するとプラチナはコロナの言いたいことがわかったようで、ことのいきさつを説明し始めた(相変わらずトーンに抱きついたままだったけれど…)
 「私は大賢者様に『ちょっとわしは出かけるからのう。そのうちあの馬鹿孫が『扉』を開いてくるだろうから、そのときは適当に相手をしてやっといてくれ。ほっほっほっほ』…って言われただけだから…」
 「………」
 『妖精族』は『扉』を自由に行き来出する、非常に行動範囲の広い種族である。そのため、昔から情報の伝達係として一役買っていてくれている(独自で情報を集め、売りさばいている妖精もいると聞いたが…嘘か本当かは知らない)
 そのため、『妖精族』の情報は正確で確実。無邪気な性格が幸いしてか、嘘をつくということをしない。しかし情報が正確であるとわかっている以上、この怒りはどこにぶつけるべきだろうか。
 (あんのアホじじぃ…)
 馬鹿呼ばわりされた孫のコロナは、あの陰湿で意地悪な顔を思い浮かべて拳を握った。
 結局のところ、あの『大賢者様』は全部知っているのだ。
 そもそも大賢者というのは、その国で一番の力と知識を持ち合わせ、すべての賢者を統べる者の敬称である。しかもモノケディア王国の大賢者と言えば、未来を見通す千里眼の持ち主として有名である。彼は先のことを見通し、それを人々に伝える。モノケディア王国が未だに王政を続けていられるのは、実は大賢者の力によるところが大きい。先を見通す彼の発言は政治に大きく貢献し、国民の支持を得られ続けてこられたのだ。
 ―もちろん、12年前の『闇の現事件』にも大賢者は強く貢献している。
 いち早く魔法使いの強大な力を察知し、対策を練り出したのは他ならない、大賢者である。そして、歴史書の暗黒面とされている、『人柱』という策を打ち出したのも…。

 「…で、その大賢者様はいつお帰りになられるんだ…?」
 「さぁ?」
 コロナの問をたったの二文字でつき返す。はぁとコロナは盛大なため息が出る。
 「…もういい…言伝を頼みたいんだが…」
 どうやら妖精のプラチナは本当に「出かけるから相手しておけ」としか言われていないらしく、これ以上答えようがないらしい。それならばこちらから伝えたいことだけ伝えて、向こうを困らせてやればいい。
 「…その前に…」
 もう今更言う気も失せてくるが…。
 「…いい加減、離れたらどうだ…?」
 この言葉に、二人はきょとんと大きな瞳を更に丸くする。いかにも、「え?抱きついていたら悪いの?」と言いたいばかりの目だ。抱きついていて悪いことはないが、いかんせんこれでは話がしづらい。
 「…それは話を聞く姿勢じゃない」
 無愛想な顔を更に無愛想にさせ、吐き捨てるように言う。しかしこっちも『頼む姿勢』ではなかったようで、
 「やだーっ」
 二人の反感を買っただけだった。
 いつまでもいつまでもじゃれあっている二人に、コロナはもうくたびれてしまい、これ以上突っ込む気にもなれなくなっていた。
 「ミクロちゃんと離れるなんてやだー」
 ぎゅうと更にトーンを抱きしめ、プラチナがにこにこしながら言う。トーンもにこにこして「ぎゅー♪」とか言っている。
 ってまて。
 「…プラチナは…知って…いるのか…?」
 今しがた、信じられない言葉を聞いた気がしてならない。言葉一つ一つを確かめ、息を呑みながら途切れ途切れに聞いてみる。
 「何を?」
 しかし相変わらずプラチナはきょとんとした顔。そのやり取りにいい加減じれったさを覚えたコロナは、すぅと息を吸って早口でまくし立てた。
 「その今抱きついているトーンがミクロ王女だって知っているのかっ!」
 「うん」

 なんというか…何がどうなっているんだ…?



* * *



はい、線路は続くよどこまでもー並に続いています。
プラチナちゃんがやっぱりキャラ違う気がしておろおろしています;;
なんだかずっと抱きついてばっかりな感じが…;
そして大賢者の説明も少しばかし…こんなに偉いお爺様だったなんて、知らなかったよ(それは皆もだよ)

そして下には拍手返信!


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