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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第50話『籠の少年。青空目指して33』

 砲弾が次々と打たれ、ゴーレムの身体がドゴンガゴンと低い音を響かせながら壊れていく。大小の破片を散らばらせながら、徐々にその巨体が崩れるように地面へと沈んでいく。ゴゴゴ…と地鳴りと共に砂埃が盛大に巻き上がり、ついにゴーレムの姿は見えなくなった。
 やがて地鳴りは止み、夜の静寂が訪れる。月も傾き、朝と夜の狭間のような不可思議な、世界の終わりとも取れる静寂。
 そんな深い静寂の中、視界を遮っていた砂埃が時間の経過と共に少しずつ晴れていく。
 「………」
 息を呑む。
 砂埃が晴れた先、そこにあったのは―瓦礫の山だった。
 谷一つ崩れたような巨大な石で積み上げられた瓦礫の山が、夜の中でぼんやりと沈んで見える。膨大な瓦礫の山でありながら、まるで遊びの途中で放り投げ出された積み木の山のような、そんな哀愁も感じる不思議な光景。
 コロナはおもむろに一歩踏み出し、瓦礫に手を差し伸べる。おそるおそる伸ばした手に触れたものは冷たい岩肌だけで、魔力も、オーラも、何も感じられない。
 それを確認したコロナが深いため息と共に肩を撫で下ろす。するとざわざわと、それまで緊張で固まっていた兵士達が動き出した。安堵のため息をつくもの、互いに勝利を分かち合うもの、そして、
 「コロナっ!」
 はっと顔を上げると、トーンがファルルに抱えられたまま、こちらへと手を振っていた。表情は二人とも、夜の中でも光る満面の笑み。
 ある程度近くまで来ると、ファルルが下ろすよりも先にトーンはぴょんと飛び降り、コロナへと真っ直ぐ飛び込んだ。突然抱きつかれてコロナは驚いて目をぱちくりとさせる。が、トーンはまったく気にした風もなく、
 「コロナっ!凄かったね!なんかもう、凄かったね!」
 何かのアトラクションでも見たかのように瞳をキラキラと輝かせている。
 「………」
 叱ってやりたいこととかいっぱいあるのだが、なんというか、この無邪気な表情は反則だと、本気で思った。
 「やったなっ!」
 と、突如元気な声と共にばんっと背中を叩かれ、コロナは少し咳き込む。首を捻って斜め後ろを見てみれば、ファルルもにぃっと白い歯を見せてキラキラと笑っている。
 「…痛いだろうが…」
 「悪い悪い」
 恨めしそうに見ると、ファルルはあははと笑いながら叩いた部分を優しくさする。少しひりついて熱を帯びていたが、不器用にさすられると、痛みが引いていくように思える。
 「ごめん…ありがとな」
 手を動かしながら、ファルルが小さく呟いた。
 ―ごめん。
 ―ありがとな。
 この二つの言葉が何に対して言われたのか一瞬迷ったが、すぐに思い当たった。
 ゴーレムの解析をするまでもたもたしていたとき、ファルルと衝突したのだ。「賢者ってものはそんなに時間がかかるものなのか?」と。
 「……気にしていたのか…?」
 聞いてみると図星だったのか、ファルルはバツが悪そうに目を逸らす。
 「…だって、あんなこと言われたら怒るだろ?…普通…」
 拗ねたように唇を尖らせ、時折こちらの様子を伺うようにちらりと漆黒の瞳を左右に動かす。
 ファルルの年相応の仕草に思わず笑みがこぼれる。コロナが笑ったのに気がついたのか、ファルルはむっと更に唇を尖らせる。「何かおかしいかよ?」と言いたげな様子に、またおかしくなる。
 「…そんな…」
 気にしなくてもいいのに…と言おうとしたのだが、もっと気の利いた言葉はないかと少し考える。
 でも浮かんだ言葉を言おうとしたら、なんとなく気恥ずかしくて口をつぐんだ。なんだか今更な気がしてならない。
 そんなコロナの腕の中からひょいと、トーンが顔を出し、
 「ありがとうっ!ファルルっ!」
 最上級の笑顔と共に、言いたかった言葉を感謝の気持ちと一緒に、あっさりと言ってしまった。
 なんでこんな簡単に言えるのだろう、と驚く。
 でも、実際に言ってみるのは考えるよりもずっと簡単なのかもしれないと思い、コロナはつぐんだ唇を離し、
 「……ごめん…ありがとう…」
 ファルルと同じ言葉を復唱した。
 二人からの感謝の言葉に、ファルルは「えへへ…」と照れくさそうに頭を掻きながら、それでも嬉しそうに無邪気に笑った。
 長い夜が明け、東の空が白み始めていた。


* * *



一体いつぶりだろう、というかもはやすでに忘れ去られている感が強いですが、ようやく続きです。
な、難産でしたが、次…長くなっても次くらいで、『籠の少年。青空目指して』はラストな予定です。
気がつけばもう50話!
よく続いたものだ…;(びっくり)

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旅戦の王女 第49話『籠の少年。青空目指して32』

 ズウゥンと耳の奥で地鳴りがする。思考が追いつかない。今目の前で起こったことが信じられない。トーンが危なっかしくちょろちょろして、ゴーレムの動きがなぜか止まって、そして、そして、踏み潰されたのだ。あの重厚な石造りのブロックが、垂直に、迷いなく振り落とされた。
 その場にいた誰もが感じた絶望感。あんなのが振り落とされたら―助かるハズがない。
 力が抜け落ち、コロナはぺたりと地面に座り込んだ。ぐわんぐわんと耳鳴りがうるさくて、耳を塞いで項垂れる。耳を塞いでいるのに耳鳴りがうるさくて仕方がない。
 ぱぁと弾けるようなトーンの笑顔が脳裏に蘇る。そしていつも明るい無邪気な声が耳鳴りの中からかすかに聞こえてくる。さっきまで自分の名前を呼んでいたのに。
 …コロナ。
 リピートされる頭をぶんぶんと振って無理矢理思考を遮断させる。
 コロナ。
 しかしいくら振ってもトーンの声は耳にまとわりついて離れない。
 コロナー。
 「………」
 ふと、違和感を感じた。周りがざわざわと色めき立っている。
 何事かと思い、コロナは項垂れていた頭をのろのろとあげ、
 「………」
 そのまま固まった。
 ゴーレムのてっぺん、頭の位置に小さな黒い影が見える。おまけに手をこちらに向かってぶんぶんと振っている。満面の笑みで。
 「コーローナーっ!高いーっ!大きいよー!ほら、ここからだとお城も見えるーっ!」
 きゃっきゃとまるでピクニックか何かに来たかのようにはしゃぐトーンの声が容赦なく振ってくる。…踏まれていたと思ったトーンは、その天性の俊敏さでゴーレムの攻撃を避け、そして何を思ったのかあんなに高いところまで登ったらしい。本当に王女か!貴女は!
 そんなコロナの気持ちを微塵も知らないトーンは、高いところから見下ろす絶景にご満悦の様子。
 「………」
 もう、アホと叫ぶ気も失せていく。
 (…煙となんとかは高いところが好きと言うが…)
 耳鳴りの次は頭痛がしてきた…。

 「うわーっ凄いーっ!」
 トーンはパタパタとゴーレムの頭を忙しなくちょろちょろしながらはしゃいでいた。
 「いけーっ!トーン二号ー!面舵いっぱーっい!」
 右を指差し、元気良く叫ぶ。もう勘弁してくれとコロナが頭を抱えた瞬間、
 ―ズシン…
 「わっ!?」
 まるでトーンの命令に反応するかのように、突如ゴーレムが大きく右へと方向転換した。いきなりの動きにトーンはバランスをなくしてよろめく。
 「うわうわわっ!」
 両手をばたばたと動かして必死に体勢を立て直そうとするが、ゴーレムが一歩踏み出し、がくんと大きく揺れ、
 「あ…っ!」
 トーンの体が宙へと投げ出された。ぐらりと視界が揺れ、足が宙を掻き、まるでスローモーションのように背景が動いていく。
 「わあああぁぁっ!!」
 絶叫が辺りに響き渡る。コロナは反射的に魔法を使おうと本を開いた瞬間、
 「…!」
 視界の端で何かが瞬時に駆けていった。はっとワンテンポずれて駆けていった先を見ると、緑色のポニーテールを風になびきながら、ファルルがゴーレムへ向かって駆けていた。ファルルはゴーレムの関節部分を足場代わりにトンと蹴り上げ、その勢いに乗ってまるでゴムボールのようにぽーんと空へ飛び上がっては登っていく。小気味よいリズムでゴーレムを登り、きっと上を見上げる。黒目がちのファルルの瞳が、今にも落下してくるトーンの姿を捉えた。
 「トーンっ!」
 ファルルは落下するトーン目掛けて空中で両腕を広げた。
 「ファルルーっ!」
 トーンも叫び、体を捻らせた次の瞬間、ぼすん!と言う音を立ててトーンはファルルの腕の中へと見事ダイブした。
 トーンを無事受け止めたファルルは、トーンを落とさないようにしながらゴーレムの側面に蹴りを入れ、その反動で大きくその場から避難するように飛び退く。
 それまで攻撃の邪魔だったトーンたちが遠のき、
 「…!今だ!撃て!」
 砲撃のチャンスを伺っていたゴーファンが後方で叫んだ。途端、大砲が一斉に火を噴き、砲弾がゴーレム目掛けて一直線に放たれた。




* * *




一体何日ぶりなんだよ…というツッコミが聞こえてきそうです…。
授業が再開されましたので、またのんびり授業聞きながら物書きする日が続きそうです。
…それにしても、動きのある文章って本気で難しいです;

※9/7にちょびっと修正しました。
 眠かったせいか文字ガタガタでした…;もっと滑らかな文章が書きたいです;

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