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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第58話『盗賊を拾った日4』

 「悪い悪い!」
 ファルルは持ってきた本を片手でブンブン振りながらやってきた。
 「どの本持ってきていいかわからなくってさ。とりあえず一番分厚いの持ってきたんだけど…」
 つい先ほどまで砂利道を走っていたとは思えない様子で話し、コロナの手に持ってきた分厚い魔法書を持たせた。突如かかった重力に、少しよろめく。
 「…もしかして、間違ってたか…?」
 重みに少し顔をしかめたのがバレたのか、ファルルが心配そうにコロナを見る。突如感じる気まずい空気に、コロナはパッと顔を上げて首を小さく振る。
 「…いや、今回は媒介にしたかっただけだから、どの本でもいい」
 そう言うとファルルは大げさに胸をなでおろし、「よかったー」と安堵の笑みを浮かべる。
 「あ、これもっ!」
 ファルルは肩にかけていたカバンを外し、本の上に重ねるようにして置く。更に追加された重みにコロナはがくんと肩を落とす。ファルルの調子に合わせていると体力が持たない気がし、コロナはとりあえず持たされた本とカバンを下に置いた。
 そして本を抱え、パラパラと本をめくり、小さく回復の魔法を唱える。
 淡い光が本を通して現れ、それは小さな粒子となって倒れている銀髪の人へと流れていく。ファルルが「おー…」と驚きと感心を含めた声を上げる。そうしている間に、光は薄れ、細かな粒子は空気中に霧散するようにして消えていった。
 ぱたんと、コロナは本を閉じる。
 「……終わり、か?」
 「ん?」
 隣で見ていたファルルがおずおずと聞いてくる。
 「終わりだけど…なんだ?」
 「あ、いや!」
 コロナの怪訝そうな質問に、今度はファルルが少し慌てたようにして首を振る。
 「俺さっ!ほら、体を動かすのは好きなんだけど…魔法はあんまり…」
 「あんまり?」
 にははと笑うファルルに、コロナが眉を潜めて聞くと、
 「……ごめん…全然…」
 ファルルは肩をがっくりと落とし、そう答えた。
 (…だろうと思った…)
 三冊あった魔法書の区別がつかなかった上、選んだ理由が『一番分厚かったから』…媒介にするというのも詳しくは知らないようだし、ファルルの魔法についての知識はあまりないらしい。戦士であるファルルが魔法に対して無頓着であっても問題はないのだが、相手はあの闇司祭。おそらく剣だけではどうにもならない。
 (…今度トーンと一緒に、魔法について教えるか…)
 そう考えたとき、じゃりじゃりと軽快に砂利を踏む音が聞こえてきた。
 「あ、トーン!」
 ファルルが気がつき、手を振り上げた。
 「ファルルー!コロナー!」
 見るとトーンは大きな鍋とタオルを器用に担ぎ、ぱたぱたと駆けてき…
 「あ」
 誰が言ったかわからないが、間抜けな声と共に、トーンの体が正面からばたんと倒れた。持っていたタオルが宙を舞い、鍋ががらんと大きな音を立てて砂利の上に落ちた。
 「トーン!?」
 コロナとファルルが同時に叫び、倒れたトーンに駆け寄る。トーンはうつ伏せに倒れたまま顔を上げる。幸い顔に傷は出来ていないようだったが、顔が赤くなり、目尻に涙がうっすら浮かんでいる。―やばい、泣きそう…。そう二人が思った瞬間、
 「…だいじょうぶっ!」
 トーンはそう言ってぴょんっと跳ねるようにして立ち上がった。そして落ちたタオルと鍋を拾い上げる。
 「ほ、本当に大丈夫なのか?」
 心配そうなファルルの問いかけに、トーンは「だいじょうぶっ!」と同じことを言い、鍋を持って川へと走り出した。川岸にしゃがみこみ、鍋に水を入れている。
 「…大丈夫…かな?」
 トーンのことが心配なのか、横でファルルが不安そうな声をあげる。一方のトーンは何もなかったかのように、コロナの指示通り、鍋に水を入れて火をたき始めている。
 「………」
 せっせと働くトーンを見て、コロナはくるっと向きを変え、
 「…車をこっちまで移動させよう」
 そう歩き出した。
 「え!?ちょ、コロナ!」
 てくてく歩き出したコロナに、ファルル慌ててついてくる。
 「…大丈夫だろう」
 今のトーンは大丈夫、そう思えた。


* * *



久しぶりすぎてごめんなさい;
しかもいまいち展開が遅くてすみません;

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