祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第52話『籠の少年。青空目指して35』

 「な、なんだこりゃ…」
 武器庫の前は騒然としていた。
 剣だの斧だの弓だの、とりあえず思いつく限りの武器が緩やかな山となって積み重なっていた。
 その予想外の光景にコロナが唖然としていると、武器庫の中から湾曲した三日月形の剣(確か南の方角の民族が使っていたような)が、ポーンと弧を描いて放り投げられた。剣はそのままくるくると綺麗に回転し、ガシャンと武器の山に積まれた。
 「これも駄目か?」
 「だめーっ!」
 と、同時に、中から二人分の声が聞こえてきた。一人はもう勘弁してくれよと言いたげにぐったりとした声で、もう一人は少し意地になった、底抜けにやたら明るい声。
 コロナがその声を聞き、そろりと中を覗くと、ほとんどカラになってしまった武器庫の中に、二人の人物が立っていた。片方は制服を着た訓練兵。もう片方はオーバーオール姿の黒髪―トーンである。
 トーンは細身の剣(確かレイピアとかって名前だったような)を持ち、手首を捻って熱心に色々な角度から見つめる。そして何度か剣を持って素振りをし、再びまじまじと角度を変えながら見つめたあと、
 「…これも違ぁーう!」
 ぶんっと持っていたレイピアを入り口に向かって力いっぱい投げつけてきた。…レイピアはちょうど、入り口から顔を覗かせていたコロナへ向かって真っ直ぐ、切っ先を光らせながら飛んできた。
 「…う、うわーっ!」
 突然のことにコロナは咄嗟に扉の後ろへと隠れる。飛んできたレイピアは速度を落とすことなくコロナのすぐ真横、コンマ何ミリのところを飛び抜け、外にあった武器の山にがしゃんと突き刺さった。勢いがまだ残っていたレイピアの刀身がびぃいんと小刻みに震え、やがて収まった。
 何が起こったのか信じられず、コロナは固まる。と、そんなコロナの横髪から、2、3本、はらりと髪の毛が落ちた。途端、『もしも避け切れなかったら』ということが脳裏に過ぎり、ぞくりと背筋が凍る。
 「……危なかった…」
 コロナは扉に背を預けてずるずると脱力し、ぺたりとその場に座りこんだ。

 恐怖で腰砕けになったコロナは、よろよろと扉に捕まりながら立ち上がり、再び中の様子を(また刃物が飛んで来ないか確認しながら慎重に)見た。
 中では先ほどの惨劇の張本人、トーンがうーんと頭を抱えて唸っていた。
 「…もう武器なんてないぞ?ボウズ」
 兵士がスッカラカンになった武器庫を仰ぎ見ながら言う。どうやらここに陳列してあった武器はすべてトーンのお眼鏡に適わなかったらしい。それであの山という訳だ。
 しかし兵士の言葉も気にせず、トーンはうーんと悩み続ける。
 「なんかねぇ、もっと重くて、でも重過ぎなくて、どかーんでぼーんでぎゃーんっていけるような…」
 意味のわからない擬音を述べながら、トーンは武器庫をうろうろとうろつく。と、隅のところでぴたりと立ち止まった。そしてよいしょとそれを持ち上げる。
 それはハンマーだった。
 土木工事などで杭を打つときなどに使われるような、樽型のずんぐりとした形をしている。かなり大きなもので、トーンの体半分はありそうである。しかし見た目より重くはないのか、トーンはそのハンマーを順手に持って高々と掲げている。
 「おい、ボウズ。それは違うぞ」
 その様子を見ていた兵士がトーンのそばに近寄ってきた。
 「それは工事や修繕で使うもので…ってうわっ!」
 兵士の言葉を遮るように、トーンは持っていたハンマーを横殴りにぶんっと大きく振った。空気のしなる音が大きく響く。
 「…っおい!ボウズ!」
 間一髪のところでトーンの攻撃を避けた兵士が怒りを露にして怒鳴りつける。しかし、トーンはまるで聞こえていないようにそのハンマーをまじまじと色々な角度で見つめた。そして、
 「えへへっ!」
 にんまりと、嬉しそうに笑った。
 ハンマーを構えたまま、トーンはくるりと兵士に向き直る。表情はこれでもかというくらいな無邪気な笑顔。
 「これ、もらうねっ!」
 「…は?…え?ぼ、ボウズ!?」
 兵士がそう言ったときには、トーンはすでに武器庫から飛び出していた。
 外に出たトーンは手に入れたばっかりのハンマーをぶんぶん振り回す。途中、勢いに負けて体ごと回転してしまっていたが、気にした風もなく、逆に楽しそうにしている。
 「…トーン…」
 その様子をずっと扉のところで眺めていたコロナだったが、さすがに何か危ないものを感じて呼びかけた。トーンはハンマーを振り回した反動でコロナの方を向いた。
 「あ、コロナー」
 今気がついたようにケロっとした様子で「やっほー」と手を振る。
 コロナは立ち上がり、被害をこうむらないようにそろりと近づいた。
 「…なんですか、そのハンマー」
 「あ、これ?さっき兵士さんからもらったの。いいでしょー?」
 まるで玩具でも買ってもらったかのようにえへへと笑いながら自慢げに話さす。
 「そういう意味ではなくて…」
 巨大なハンマーを構えたまま無邪気に笑うトーンに対し、軽く頭痛を覚えながらコロナは続ける。
 「…どういう経緯でハンマーを持っているのか?ということを聞いているのではなく、なぜハンマーなんて物騒なものを貴女が持つ必要があるのかと…」
 ここまで言ってコロナは言葉を切る。案の定、トーンの頭には無数のハテナマークが飛び交っていた。
 「…えーと…」
 コロナは頭を悩ましながら、どう聞けば聞きたい答えが聞けるのか数秒間、悩んだ。


* * *


予想以上にこのやり取りが長くなってしまったので、適当にここら辺で切ります。
書きたかったトーンがハンマーを手にするシーンです。
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