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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第55話『盗賊を拾った日1』

 「…く…」
 全身が、痺れて動けない。あまりの痛さに頭がぼんやりしてきて、目の前の景色が二重に見える。
 「…まっ…たく…」
 言葉と一緒に血と痰が混じったものが吐き出される。口の中を切ったらしい。
 感覚がだいぶ麻痺してきた腕を突っぱね、なんとか上体を起こす。直撃は免れたが、その反動でこんな遠くまで吹っ飛ばされてしまった。その際、あちこちぶつけて擦り付けて全身がとっても痛い。そう思って腕を見たら、少し青あざが出来ていた。
 「…ザマァ…ねぇでサァ…」
 口の端から垂れた血と頬についた泥を腕で乱暴にぬぐいながら、苦々しく吐き出した。



   * * *



 訓練施設から離れたコロナたちは、たまたまた見つけた川原で休んでいた。
 「………」
 コロナは地図と魔法書を開き、それぞれを見比べる。
 「……あと一時間というところか…」
 次の目的地、『久遠の泉』までの距離を確認する。
 『久遠の泉』はこの地方では割と有名で、万病に効くとされている。その効果は学問的にも証明されていて、なんでもあの一帯の地盤には元々強い魔力が宿っており、それが水に溶け込んで湧き出ているらしい。水自体に魔法が宿っているのだから、そりゃあ効果があるのも頷ける。
 コロナが持ってきた魔法書にも、『久遠の泉』から湧き出た水が必須であると書いてあった。
 ―…突然眠りについたモノケディア国の白き王女・ミシロを救うためには。
 もちろんこの魔法が効くかどうかはわからないが、何はともあれ持ち帰っておいて損はない。
 それに『久遠の泉』には小さいが、村がある。
 『久遠の泉』を守るための、質素だがとても穏やかな村人が住んでいると聞いている。そこで体を休めておくべきだろう。
 何せ訓練施設を出てから、
 「とりゃあ!」
 コロナの背後で、威勢のいい声と共にベキバキと何かが折れるような豪快な音が聞こえてきた。
 「やったぁ!やったよ!」
 「すげーな、トーン」
 無邪気に喜ぶ少女の声と感心するような少年の声。
 コロナはゆーっくりと、ギギギと油の切れたゼンマイのように顔を後ろへと向けた。
 そこには、大きなハンマーを構えたトーンと、長いエメラルドの槍を構えたファルルが立っていた。二人の間には何かの残骸らしきもの。それを見下ろす二人の笑顔はとっても笑顔。
 …二人とも、訓練施設を出てからずっとこんな調子だ。
 「あ、コロナー!」
 視線に気がついたのか、トーンがハンマーをぶんぶん振りながらこっちへと向かってくる。その光景に一種の狂気を覚え、コロナの腰は自然と後ろへと退いた。
 「あのね!あのね!凄いよ!僕、一人で倒したんだよ!?」
 ハンマーを得意げに振りかざしながら、トーンはえっへんと胸を反り返らせる。「一人で倒した」というのはあの残骸のことだろう。一国の王女としてそんなんでいいのか?とか、ますますお転婆に拍車が掛かったとか、色々言いたいことはある。が、邪険にしてはまずいと思い、
 「…はぁ、よかった…」
 ですね。と言おうとした瞬間、
 ―ドスッ!
 コロナの顔のすぐ横を、槍が一直線に貫いた。
 一瞬、何が起こったのかわからず、コロナもトーンも動きが止まる。
 数秒の静寂。ピーヒョロロ…と遥か空の上で鳥の鳴く声が、静まり返った大事に降ってくる。
 「……あっぶなかったぁ…」
 口火を切ったのはファルルだった。
 いや、それは俺の台詞だろ、と安堵のため息をつくファルルに対し、コロナは突っ込みを入れたくなったが、ふと視線を下ろし、驚く。
 地面に刺さった槍の切っ先に、獣なのか植物なのかよくわからないものがあった。目がぎょろりとしており、手と思わしきものからは鋭いナイフ状の爪が生えていた。
 ―モンスター…そんな形容詞がふさわしい生き物であった。その生き物も、刺された衝撃でびくびくと痙攣を起こしていたが、やがて動かなくなった。動かなくなったものからシュウゥと煙状の魔力が抜ける。
 「…こいつ、後ろから襲い掛かろうとしてたぞ?」
 ファルルが槍を引き抜きながら、コロナを見下ろす。注意力がおろそかになっていたことを実感させられ、背筋にひやりとしたものが通る。
 「でも、何なんだろうね?この変な生き物…さっきからいっぱいいるけど…」
 トーンは不思議そうに首を傾げた。

 訓練施設を出てから少し経った頃、異変は静かに起きた。
 車で平地を走っていると、突如、見たことない小動物のような変な生き物がコロナたちに襲い掛かってきたのだ。あわや車に飛び込んで来るかというそのときに、ファルルが瞬時に撃退した。
 何事かと思い、車を降りて生き物を見たところ、何の生き物かわからない。そもそも動物なのか植物なのかも分別つかないような謎の姿をしていた。そして解明される前に、倒された生き物は動かなくなり、同時に魔法がシュウゥと抜けて消えていった。
 そのような生き物がこの川原に着くまで何度となく現れ、その度にファルルと、そしてトーンが撃退していった。…そのため、訓練施設を出てからトーンのハンマーの腕前はとんでもなくレベルアップした。
 コロナは倒された生き物をじぃと見た。かすかに残った魔力を感じ取り、眉間にシワが寄る。
 「何かわかった?」
 トーンがコロナの顔を覗き込む。トーンの問いかけに、コロナは少し間を空け、
 「…おそらく、ゴーレムの類…ですね」
 そう答えた。
 「ゴーレムって…あのでっかいアレ…?」
 「…いや、違う。もっと弱いものだ」
 ファルルの当然の質問にコロナはすかさず答えた。
 訓練施設に現れたゴーレムは桁違いに強かった。魔力のある位置を特定するのも難しかったし、なにより強度、体力、攻撃力、ともに次元が違っていた。…さすがに12年前の闇司祭が直接操っただけあるが…。
 「…おそらく、そこら辺の小動物や草木が強い魔力を浴びてゴーレム化したものだろう。…むしろ、突然変異のモンスターとでも言ったほうがいいかもしれない」
 コロナの説明に、ファルルもトーンもへぇと頷く。
 …しかし、この平地に今までこんな生き物はいなかった。本来ならば、このようなモンスターはもっと北の方や森の奥地など、魔力が強い部分には生息している。それがこんな何もない平地に現れるとは。
 「…これも…なのか…」
 チラリとちらつく、世界を揺るがした巨大な闇の存在。
 奴が通ったところに強い魔力が撒かれ、それにより突然変異を起こしたのならば…説明がつく。
 自分たちは意識せず、闇司祭の足跡を追っている…そんな気がした。



   * * *



ということで第三章!
モンスターが出てきてようやくRPGって感じです!
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