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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第56話『盗賊を拾った日2』

 「なぁ、次はどこ行くんだ?」
 ファルルがコロナの持っていた地図を見下ろしてそう聞いてきた。
 あぁ、そういえば説明がまだだったな、と思い、コロナはこの先にある『久遠の泉』についてと、そこで休憩と泉の水の採取を行うことを伝えた。
 「へぇー…そんな泉あるんだぁ…」
 訓練施設育ちが長いせいか、ファルルもトーンに負けず劣らず世間知らずらしい(トーンと一緒に迷子にでもならければいいけど…)初めて聞いた地名と効能に、半分納得したように頷いた。
 「わかったか?」
 「うん」
 コロナの確認に対し、ファルルは大きく頷き、
 「ところで俺たちって結局、何しに行くの?」
 笑顔でそう言った。

 トーンとコロナは気性の違う、似たところがまったくない二人であるが、このときばかりは、この瞬間だけは、二人同時に盛大にコケた。
 「…え…えぇ??」
 起き上がりながらトーンは訝しげな声を上げる。コロナも尻餅ついた状態でファルルの顔を「えー…?」と見上げた。
 「な、なんだよ!だって二人とも言ってくれなかっただろ!?」
 二人のオーバーリアクションを受け、ファルルは困惑したように言う。
 「『久遠の泉』ではあれだろ?休憩と、水取ってくんだろ?…でもさ、なんでそんな水使うのかなーとか…そもそも俺たちってどこ目指しているんだろうなぁって…ちょっと思って…そのぅ…」
 終いには聞いた自分が悪かったのでは?と言う様に、言葉尻が小さくなる。
 申し訳なさそうにチラチラとこちらの様子を伺うファルルに、はぁとコロナはため息をついて立ち上がる。
 「…いや、これは俺たちが悪い…」
 せっかくの旅の共なのに、旅する理由がわからないのはおかしいことだ。ファルルはあの訓練施設から出たくてコロナたちに着いてきた訳だから、まさか今更断るということはないとは思う…が、ファルルにはそれを聞いて、自身で旅に出るか否かを決定する権利がある。説明しておかねばなるまい。
 「…わかった、説明する」
 コロナの一言に、ファルルの表情がぱぁと明るくなる。うんうんと頷き、早くも話を聞く体勢に入っている。と、
 「あ…」
 トーンと目が合った。なんとなく、気まずい雰囲気になる。
 旅の経緯を説明するには、どうしても白の王女・ミシロの名前を出さなければならない。…下手したら、トーンが黒の王女・ミクロであるということも…。
 「…僕、ちょっと川で手洗ってくるねっ」
 ぱっとトーンは笑顔を作り、そう言ってたたっと川へ走り出してしまった。
 「…?…なんだぁ?」
 ファルルはきょとんとした様子でトーンの後姿を見送る。
 「………」
 まだ、抵抗があるのだろう。
 ミシロの話を聞きたくない―そう拒絶しているように見えた。
 聞いても辛くなるだけだろうし、今トーンは精一杯強くなろうとしている。あえてここで感傷に浸らせる理由も意味もない。
 「…じゃあ、いいか?」
 まだトーンの背中を見ていたファルルに、コロナは切り出した。
 「あ、うん」
 ファルルはコロナの方に向き直り、近くにあった手ごろな大きさの石に腰掛ける。コロナも同じように腰掛け、向かい合った状態になった。ふぅと息をついて、さてどこから切り出すべきかと少し考え、
 「…モノケディア王国の白の王女…ミシロ様についてだが…」
 話し始めた。

 「…そうなんだ…ミシロ王女様が…」
 事の起こりを知り、愕然とした様子でファルルは呟く。
 ファルルにはミシロ王女が眠りについたこと、王の命令でミシロ王女を起こすための方法を探すということを話した。そして一応、コロナが大賢者の孫であることも。
 「でもすっげーな、コロナ。大賢者様って言ったらアレだろ?…凄いんだろ?」
 何が凄いのかさっぱりわからないが、でもそうだと言っておく。
 「…この年で賢者なんて俺ぐらいだろうから、一応言っておく。…けど、言いふらさないようにしてくれ」
 「え?何で?」
 ファルルのきょとんとした顔に、コロナははぁと何度目かのため息をつく。
 「…事態によって、話していいときと悪いときがある」
 「例えば?」
 「た、例えばって…」
 間髪入れないファルルの合いの手に少々戸惑いながらも、コロナはうーんと例題を考える。そして、
 「…大賢者に昔ひっどいことされて、すっごい恨みを持っている奴がいて」
 「うんうん」
 「そういう奴に俺がその大賢者の孫だってバレたら…どうなる?」
 「ヤバイな」
 「そういうことだ」
 的確な例題により、ファルルと見事な会話のキャッチボールが成立した。
 結構長い間二人で向き合い、話が前後したり重複したりしながらも、
 「…そっか、じゃあミシロ王女のために、旅をしている訳だな?」
 なんとかファルルに旅の経緯が説明できた。
 うん、と頷いてやるとファルルは緊張が解けたように、ふぅーっと大きく伸びをする。なんとなくファルルの動作一つ一つが猫を思わせる。ぐっと伸びきったファルルは全身の力を抜き、コロナの方を向いた。
 「…これから三人でがんばろうな!」
 にかっとした眩しい笑顔を見せてそう言った。
 「………」
 旅の目的、コロナの素性については話した。―が、トーンのことは結局話さなかった。トーン自身が説明の場から逃げたのは、もちろんミシロ王女のことを聞きたくなかったからであろう。それと同時に、まだミクロ王女には戻りたくない、というのも感じた。
 だからファルルには申し訳ないが、もう少し、彼女については黙っておくことに…
 「コロナぁっ!ファルルぅっ!」
 突如、掠れた叫び声が聞こえてハッとファルルとコロナが振り返る。
 「トーン!?」
 ファルルが次の瞬間には川に向かって駆け出していた。ワンテンポずれてコロナも後に続く。
 「トーン!大丈夫か!」
 ファルルが声をかけたとき、トーンは少し上流のところで半泣きで立っていた。グスグスと肩を震わせて泣いている。ファルルがトーンの元へ駆け寄ると、トーンは鼻をぐずぐず言わせながら上流を指差し、
 「死んじゃう!死んじゃう!」
 なぜだかそう喚いて両手をぶんぶんと乱暴に振り回した。
 「…死ぬ?誰が?」
 ファルルがそう聞くが、トーンは詳しいこと言わずに泣き喚く。このままでは埒が明かないと思ったファルルは、トーンが指差した方向へと向かって駆け出して行った。そしてファルルの姿が小さくなった頃、ようやくコロナがのてのてと遅い足取りでやって来た。そして死んじゃう死んじゃうと泣き喚くトーンを見つけ、駆け寄る。
 「…死んじゃうって…」
 パッと見たところ、トーンには致命傷どころか小さなかすり傷一つない。むしろこんなにビービー泣いているのだから、『死んじゃう』のはトーンではなさそうだ。
 「…いいから落ち着いてください。誰が死ぬと言うのですか?」
 そうコロナがトーンに問いかけた、そのときだった。
 「うわあああぁぁっ!」
 上流から聞こえた叫び声。
 「ファルル!?」
 ただ事ではないことを感じ取り、コロナは川原の砂利道を駆け出す。普段の運動不足もさることながら、やっぱりこの白い長衣はとても運動向きとは言えない。
 川を上っていくと、少し大きめな岩があった。ファルルの半身がそこから見えている。
 「ファルルっ!」
 コロナが大きな岩場の影を除き、
 「…!」
 目を疑った。
 だらり力なく項垂れた四肢。血と泥で汚れて固まった銀髪が、無数に傷が入った頬の張り付いている。衣服はどれも血と泥で汚れていて…まるで死んでいるように、その人はそこにうずくまっていた。



* * *



いえい、ということでようやくファルル君に旅の経緯を説明できました。
なんだか会話ばっかりになってしまったような…;(うむむ;
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