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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第59話『盗賊を拾った日5』

 トーンは川から水を汲み、せっせと運んでいる。ファルルは手ごろな大きさの石を集めて囲いにし、即席のかまどを作っていた。コロナは車をそこまで移動させた。なんとなくキャンプでもしているような和やかさがあった。
 見ると倒れていた人の怪我も癒え始め、顔色もだんだんとよくなっているようだ。
 「はいはい、どいてどいてー」
 ぬるま湯程度になったお湯を使い、トーンはタオルを絞った。ほのかに蒸気が上がるタオルを持って泥だらけの体を拭こうと倒れている人の元へと行く。
 「あ、トーン。俺がやるか…」
 コロナはそう声をかけた。いくら何か手伝いたいと前向きになったとはいえ、さすがに王女怪我人の清拭をさせるのは気が引けた。トーンは倒れている人の衣服を脱がそうとしたのか、襟元に手をやっている。と、ぴたりとトーンの動きが止まった。
 「…俺がやりますから」
 近づいてタオルをその手から取ろうとした瞬間、
 「…駄目えええええええええええっ!」
 「うわっ!?」
 すさまじい剣幕で突っぱねられる。何がどうなったのかコロナにはわからない。ただトーンはつんつん跳ねた猫っ毛をさらにぴんぴんにさせ、
 「駄目駄目駄目っ!駄目ったら駄目なの!」
 タオルをぎゅっと握り締め、頑なに駄目駄目と繰り返す。その勢いに気圧されてコロナは後ずさった。
 「あっち!」
 びりしとトーンは人差し指を突きたて、車の停めてある土手を指差す。
 「あっちいってて!」
 何がなんだかわからない。
 トーンはくるりと向きを変え、きょとんと目を点にさせているファルルを見て、「ファルルも!」と再びびしりと人差し指を突きたてた。
 「な…なんなんだよ…」
 ファルルにも何が起こったのかわかっていない様子だった。
 突っかかろうかとも考えたが、トーンにふざけている様子は見られない。ただ頑なに拒む様子に、コロナは折れた。
 「…行こう」
 コロナの言葉に、ファルルは渋々了承して歩き出した。ちらりと後ろを振り返ると、トーンは仁王立ちをした状態でじっとこちらが移動するのを見張っている。指定された場所まで移動しないと動くつもりがないらしい。
 仕方なくコロナとファルルはそのまま土手まで上がった。車の近くまで来るとトーンの姿は確認できたものの、岩にもたれかかっているであろう怪我人の姿は見えない。
 「なんなんだろうなー?」
 コロナに聞こえる程度の音量でファルルが問いかける。コロナは「さぁな」とそっけなく答えた。最も答えがわからないのだから、それ以上答えようがない。
 コロナは魔法書をぺらぺらと読み始めた。辞書のようなものだから、頭から読むとそれなりに面白い。
 ファルルも暇になったのか、槍を持って素振りを始めた。ひゅんひゅんと風を切る音が継続的に聞こえる。

 ―ノンキだなぁ…。

 コロナは心中で呟いた。
 その言葉は大概無邪気に振舞うトーンやファルルに対してのものであったが、今は自分を含め、この流れている時間に対してである。
 とても王女を救うため旅に出ているようには見えない。
 少年二人と少女一人、川原でキャンプをしているという方がしっくりくる。むしろそうあってくれないかなぁと思った。



     * * *



久しぶりすぎて…なんか…あれですが…!
帰ってまいりました…色々直したいところもありますが、とりあえず終わらせなければ…
ということで、ぐだぐだエセファンタジー小説再開です。
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