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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第60話『盗賊を拾った日6』

 ふと、素振りの音が止まった。
 本から目を離しファルルを見ると、彼は川原の方を黙ってじっと見ていた。コロナも川原を見る。と、
 「やっほー」
 トーンが手を振りながら現れた。表情はにこにこと華やかだ。―そして、
 「………」
 その後ろを、あの怪我人がついてきていた。
 白い髪に、サイドから流れる髪は燃えるような赤と冴え冴えとした金。瞳も同じように左右違うオッドアイ。―コロナは無意識に身構えた。
 (…ブランクと同じ…?)
 あの闇司祭ブランクもオッドアイだった。記憶違いでなければブランクのオッドアイは紫と金色であった。しかし目の前にいる人物は赤と金…。違うと言えば違うし、でも類似する金色の瞳が気になる。
 怪訝そうなコロナの表情を感じ取ったのか、目の前の人物はオッドアイの瞳を細めた。
 「あんた達が助けてくれたんですかィ?」
 訛りがある言葉遣いだった。どこの地域の訛りかわからなかったため、彼の口癖なのかもしれない。声はどことなくは中性的な響きを持っており、耳さわりのいい声だった。
 「もう歩いていいのか?」
 そう聞いたのはファルルだった。
 「おかげさまでねぇ…ほら」
 そう言って手や足を動かしてみせる。どうやら治癒の魔法は効果があったらしい。トーンが体を拭いたためか、泥や血のあとも綺麗になっている。
 よくよく見ればとても端正な顔立ちをした人物であった。
 髪の色や瞳の奇抜さに目を奪われてしまいがちだが、整った目鼻立ち。真っ白で抜けるような肌。ひらひらとした体のラインがわかりづらい服装なため、さすがに体格まではわからない。しかし、ひらひらとしているが材質は軽そうで、稼動域が広い分動きやすそうであった。
 (…シーフ?)
 コロナはそう感じた。剣士にしては軽装すぎるし(ファルルのことはとりあえずおいといて)魔法使いとも雰囲気が違う。ただの村人ということも考えられるが。その人の目はただの村人のものではなかった。
 さりげなく、こちらのことを『見て』いる。
 値踏みされているような嫌な感覚に、コロナは顔を背けた。
 トーンは背の高いその人物を見上げて眉毛を八の字にする。
 「本当はもっと休んでてって言ったんだよ?でももう大丈夫だーって言っちゃってさー」
 「だから本当に大丈夫なんでサァ。トーンのおかげで生き返えりましたって」
 申し訳なさそうに言うトーンの肩を叩きながらにかりと笑った。それを見てトーンが「うん」と笑った。どうやらいつの間にか意気投合しているらしい。
 和気藹々としている二人を見ながら、コロナとファルルはぽつりと置いていかれた気分になる。
 「…おっと、申し遅れましたねェい」
 そんな気分を察してか、オッドアイの人物はコロナとファルルに向き直り、その赤と金の瞳を凛と、しかし意地悪っぽさを残した輝きで見つめる。
 「…俺はハルモニアと言いまサァ。…ハルって呼んでくだせェ」
 にかりと笑った。
 「俺はファルル!よろしくな!」
 真っ先に名乗ったのはファルルだった。こちらも猫のように無邪気な笑顔でにかりと笑い、右手を出す。ハルはその右手を受け取り握手を交わした。
 「………」
 その和やかな様子を、コロナは怪訝そうに見つめる。
 「…あんたは?」
 ハルが右手を差し出してくる。
 正直、この会ってわずかしか経っていないハルを信用していいかはわからなかった。闇司祭ブランクとの関係性は今の時点では立証できない。それに―ハルはまだ何か隠している。―そう感じられた。
 「…コロナー?」
 黙ったままでいると、トーンとファルルが心配そうに見つめてきた。疑うことを知らない二人には、コロナの心の葛藤などわかるはずはない。
 このまま自分の中で押し問答していても仕方ないと判断したコロナは観念したように、 
 「…コロナだ」
 石を吐き出すように重苦しい口調で名乗った。
 「…信用ないようですねぇい」
 ハルは苦笑した。



気がつけば60話目…
今回はストック分があるのでしばらくは食いつながりそうです。
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