祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第61話『盗賊を拾った日7』

 「でもどうしてあんなところで倒れていたの?」
 そう尋ねたのはトーンだった。最も根本的な質問に、ハルはうーんと唸る。
 「…これはねぇ…何せ恥ずかしい話なもんですからねぇい…」
 できればあんまり話したくないですねぇと言葉を濁す。
 「恥ずかしい?土手から落ちたのか?」
 ファルルがきょとんとして言う。ハルは不満そうに眉をひそめる。
 「さすがにそこまで間抜けじゃありませんて」
 そりゃそうだ。土手から転んだだけであんな半死半生の状態になっていたらたまったもんじゃない。
 ハルはうーんうーんと唸りながら、ポケットから紙タバコの箱を取り出した。箱の底をとんと叩き、慣れた手つきでタバコを銜える。
 子供の前でタバコはいかがなものかとコロナが口を挟もうとした瞬間、
 ―ジッ!
 タバコの先端で火花が散った。と、同時にタバコから煙が上がった。ふぅーとハルは顔を背け、ひとつ息を吐く。
 「…魔法か?」
 「簡単な奴でさァ」
 ライターをいちいち持ち歩くのも面倒ですからねい―ハルはタバコを銜えた状態でにかりと笑った。コロナの怪訝は益々深まった。
 魔法がまったく使えないのなら関係も薄くなるが、多少なりと魔法が使えるとなると話は違ってくる。あの闇司祭は悪の権化、巨大な魔力を操る存在なのだ。
 「…きちんと話さないと疑いは晴れそうにありゃしませんねぇ」
 コロナの怪訝そうな視線にハルは顔を歪ませた。
 「…仕方ねぇですねぇい…」
 ハルはぼりぼりと頭をかき、踏ん切りをつけるように宙に向かって一つ息を吐いた。
 「……まぁ、笑い話くらいに聞いてくだせぇ」
 苦笑したその表情がタバコの煙にかぶった。
 トーンとファルルはハルをじっと見つめ、興味津々に耳を傾けている。コロナも黙って聞いている。
 「―ところで、あんた方はどちらへ?」
 声の調子を変え、ハルはそっ頓狂なことを聞いてきた。唐突な質問に一同は目を丸くする。
 「…久遠の泉だが…?」
 やや沈黙あってから、コロナが答えた。
 「あちゃー…」
 ハルが頭を抱える。何でそんな頭抱えられたのか意味がわからず、コロナはトーンとファルルと顔を見合わせた。
 「何かあんの?」
 「ありまサァ。とびっきりの爆弾が」
 「爆弾!?」
 ハルの言葉にトーンがひっくり返った声を上げる。
 「ば、ば、爆弾って…どういうことなんだよ?」
 ファルルも驚いたようで、しどろもどろに尋ねた。ハルはふぅーと煙を吐き、銜えていたタバコを手に持ち替えた。煙が手の動きにあわせて螺旋状の渦を作る。
 「悪いことは言いません。久遠の泉には立ち寄らない方がいいですぜい?」
 「爆弾があるから?」
 素直なトーンの言葉に、ハルはうんうん頷いた。
 「…ただの爆弾ならいいんですけどねぇい…これまたヒステリックに投げてくる人がぁいる訳ですよ」
 なんとなくわかった気がする。
 「…爆弾を持った危険な奴が久遠の泉に潜んでいるのか?」
 「80点ってとこですかねぇ?」
 ―100点じゃないのか、惜しいな、ちっ。…コロナは誰にも聞こえない程度に舌打ちをした。
 その舌打ちを聞いていたか聞いていなかったか、ハルは苦笑したように続ける。
 「爆弾を持った危険な『奴ら』でサァ。―盗賊集団。『チョイナー・ベル』っていう破壊大好きな集まりでねぇ」
 「…チョイナー・ベル?」
 そういえばそんな名前の盗賊の記事を読んだことがある。他国であったことらしいが、爆弾を持った盗賊がいきなり襲ってきて、家財をあらかた盗んだ上に家を木っ端微塵に爆破した…というものだ。あまりにも豪快なやり方に記事の信憑性を疑ったものだが、
 「本当にそんな奴らがいたのか」
 「これがね、いるんですよ」
 真面目に驚いているコロナに、真面目にハルが答えた。


     * * *


くわえタバコのハルさんが書けてシアワセ…
なんだか変な盗賊が出てきました。名前の雰囲気からしてあいつらが犯人に違いないです。
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