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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 題62話『盗賊を拾った日8』

 「本当は俺もあんな奴らと関わるつもりなんてこれっぽっちもなかったんですがねい?これが、まぁその…」
 ここに来て再び歯切れが悪くなった。どうやら本人曰く『恥ずかしい話』とはここら変のエピソードに含まれているらしい。
 「なになぁに?」
 「何だよ?もったいぶらずに教えろよ」
 そのことに気がつかないトーンとファルルがずずいとハルに顔を近づける。ハルは困ったように顔を背けた。
 「まー…その…あ、言い忘れてましたけど」
 話題を変えたかったのか、ハルは真顔で、
 「俺はシーフなんでサァ」
 やっぱり―コロナは小さくガッツポーズをした。
 「…なんですかィ?」
 「いや別に…」
 ハルの怪訝そうな表情を横目で流す。
 「へー、シーフかぁ!かっこいいなぁ!」
 ファルルが瞳をキラキラと輝かせた。身のこなし軽やかに戦うシーフという職業は彼にとって憧れの対象であるらしい。
 「…でも、シーフって泥棒さんでしょう?」
 それって悪いことだよねぇ?と、トーンが至極まっとうなことを聞いてきた。お転婆だからファルルと似たような感想がでるかと思ったが、こういう変に道徳があるところは王女らしい。
 ハルは長い人差し指を立て、ちっちっと横に振る。
 「…俺の仕事は宝探しでサァ。トレジャーハンターとでも名乗った方がいいかもしれませんねぇイ」
 トレジャーハンター!
 途端、トーンの瞳もキラキラと輝きだした。
 「凄い!お宝探して、こう…ぎゃーんってなるんだよね!?」
 「ぎゃーん?」
 謎の擬音にハルの頭上に大きなハテナが浮かぶ。
 「こう、こうさっ!遺跡?とかでこう、ね!大きな岩ごろごろ?っとか!」
 精一杯説明しようと身振り手振り大きくなるトーン。顔は興奮して真っ赤になっている。それを聞いたファルルが「俺も知ってる!」と声を上げた。
 「お宝取ったら大きな岩がごろごろ転がってくるんだよな!?―んで、それを間一髪のところでこう、しゅばっと!」
 「かっこいい?!」
 二人できゃいのきゃいのと盛り上がっている。話の断片から察するに、どうやら二人は有名な物語…トレジャーハンターが活躍する冒険活劇について語っているらしい。あの場面がかっこよかった。あそこがおもしろかった。と口々に感想を語っている。
 気がつけば二人の雑談に花が咲いてしまい、肝心のハルがぽつりと置いてけぼりになっていた。
 「…それで?そのトレジャーハンターなシーフだからどうした?」
 コロナがハルのオッドアイの瞳を見上げながら聞いた。ハルはおどけた表情で肩をすくめ、楽しそうに話す二人を指差す。
 「楽しそうにやっているからその話は今はいいんじゃないですかい?」
 どうやら『恥ずかしい話』をせずに有耶無耶にしてしまおうという魂胆らしい。
 「…あの話はなかなか傑作でしたねぇ。俺も全巻揃えまして…」
 「…それで、シーフだからどうした?」
 本気で話をそらすつもりのハルに、コロナが再度聞く。ハルは怪訝そうな顔をしたが、すぐに諦めたのか、
 「……結構食いつくんですねぇ」
 にやりと笑った。
 また話をするつもりになったらしいと感じたコロナは疑問に思っていたことを問いかけた。
 「…シーフと盗賊というからには、ハルとその『チョイナー・ベル』というのは仕事仲間じゃないのか?」
 「ぜーんぜんっ」
 ハルはオーバーリアクションで顔を横に振ってみせる。
 「最初に言ったでしょう?『あんな奴らに関わるつもりはこれっぽっちもなかった』って」
 それとトレジャーハンターと盗賊は仕事区域もまったく違うんでサァ。―ハルはタバコの煙を吐きながら説明した。
 「そもそも同じ盗賊だったとしても、あんな何でもかんでも爆破して強引に盗るやり方は…俺ぁ賛成できませんねぇ」
 どうやらシーフや盗賊間でも色々と派閥のようなものはあるらしい。
 「……俺が久遠の泉に来たのはまったくの偶然だったんでサァ。……ある遺跡を巡って、それなりに高価なお宝をゲットできましてねぃ?それをそのままこの先のレイ・サント辺りで捌こうかと思いまして…」
 「…の、割には結構身軽だな?」
 ハルを見つけたとき荷物らしい荷物を持っていなかった。他国で捌くほどのお宝を所持していたとは思えない。
 「話は最後まで聞いてくだセェ」
 ぴしゃりとハルに言われ、コロナは黙りこけることにした。黙っているのはコロナの十八番だ(むしろ喋ろと言われる方が苦痛だ)
 「…んで、遺跡探索で疲れたし、お宝は重いし…ということで、ここら辺りで宿でも取ろうかと思いましてねぇ?…久遠の泉の村で宿を取って、休んでた訳でサァ」
 ハルはあははと苦笑する。
 「お宝持ったまま休むなんてずいぶん余裕があるなぁと思いましょう?…もちろんこれが盗品だったら足が着く前にさっさと捌くんですがねぇい?遺跡のお宝だと持ち主はとっくの昔にお陀仏しるでしょう?それに岩がごろごろ?っと転がってくるほど大掛かりな遺跡でもなかったですし、ねぇ…?」
 ちらりとハルは目線を逸らす。逸らした先にはトーンとファルルがまだ話に花を咲かせていた。目線に気がついた二人は「え?何?」と目をぱちくりさせている。先ほどのハルの言葉には気がついていないらしい。
 「…でも今思えば、ちょっと無理してでもレイ・サントまで行ってればよかったと思いまサァ…」
 自嘲気味に、ハルは言葉を吐き出した。一緒に煙も吐き出される。タバコの灰がちりちりとこぼれた。
 「―異変が起こったのはその次の日…昨日?のことですかねぇい?」
 と、ここでハルがコロナに今日の日付を聞いてきた。コロナが答えると、ハルはほっと息をつく。
 「じゃあやっぱり昨日のことでサァ。…もしかしたら何日間か気絶してたんじゃないかとちと心配になりましてねぇい…」
 あれだけの怪我だ、勘違いしそうになっても無理はない。とコロナはハルのことをフォローしようと思ったが、黙っていろ発令を忠実に守ってそのまま黙っておいた。
 (…しかし引っかかる)
 昨日といえば、訓練施設で闇司祭が現れ、巨大ゴーレムと一戦交えた日だ。ただの一致とは思えない。
 「…昨日、宿で昼近くまで寝てましてねぇい?そしたら急に外でどーんと大きな音がしまして…」
 「爆弾!?」
 「爆弾!?」
 トーンとファルルが同時に声を上げた。トレジャーハンター談義が終わったので、こっちに戻ってきたらしい。ハルは続ける。
 「…それで何事かと思って外を見てみたら、久遠の泉の方から煙がでていたんでサァ」
 三人顔を見合わせ、神妙な顔つきになる。
 「ど、どうして…?」
 「……奴ら…でサァ…」
 わざと声を低く恨めしげに言うハルに、トーンとファルルはひっと悲鳴を上げる。
 「…『チョイナー・ベル』」
 コロナは口のチャックを外してさらりと言った。
 「ネタバレは嫌がられますぜぃ?」
 脅かそうと思ったのに…とハルはぶちぶち言いながら唇を尖らせた。
 「『チョイナー・ベル』って…さっき言ってた爆弾大好きな盗賊のこと?」
 トーンの質問にハルは頷いて答える。
 「ネタバレされちゃったから素直に言いまサァ。…久遠の泉には『チョイナー・ベル』の連中がいて、爆弾構えてその一帯を占拠してたんでサァ」


     * * *


有名なトレジャーハンターはもちろん、あの方。
でも私は原作を見たことありません…(おい)
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