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祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女  第63話『盗賊を拾った日9』

 「えええぇっ!?」
 「なんでぇ!!?」
 トーンとファルルが声を上げる。二人のオーバーリアクションにハルは顔をしかめる。
 「俺だって知りたいでサァ」
 「…『チョイナー・ベル』が久遠の泉を襲撃したのはまったくの偶然だったってことか?」
 「?えぇ、そうでサァ」
 ハルの答えにコロナは思考を巡らせる。偶然、本当に偶然だろうか?
 「…んでまー、そのまま久遠の泉の周りを陣取って村人たちを軟禁した訳でサァ」
 「なんきん?」
 トーンが鍵を開ける動作をした。
 「…それは南京錠です」
 コロナのツッコミにトーンは「あちゃー、そっかぁ」と頭をかきながら笑った。南京錠を知っていて軟禁を知らない辺り、素なのか狙っているのか怪しくなってきた。
 「村まで盗賊集団が襲ってきたんでサァ。爆破された家はなかったんですがねぇ…家財は盗まれるわ、おまけに村中を盗賊の連中がうろついているから外に出るにも出られない状態で…」
 「うわあぁ…」
 トーンが情けない声を出す。
 「ひっでぇなそれ…よくハルは無事だった…」
 憤慨したように切り出したファルルはそこで「あ」と言葉を切った。ハルが苦笑したように顔を歪める。
 「…あんまり無事じゃなかったですがねぇい…」
 短くなったタバコをぷっと足元に吐き出し、靴の底でぐりぐりと火を消す。そして再び紙タバコの箱を懐から取り出す。
 「子供の前」
 今度こそコロナは口を挟んだ。ハルは申し訳なさそうに目じりを下げ、
 「いやぁ、失礼しました。…でもこれが俺の商売道具ですからねぇい」
 「?」
 そう言ってタバコを銜え、最初と同じように火をつけた。ふぅーっと紫煙がゆるりと空へ上っていく。
 「…うん。であの状態の通り、俺はその盗賊集団にやられましてねぇ」
 久遠の泉で『チョイナー・ベル』を見たハルは急いで村から出ようと宿へ戻った。宿にはまだ宝やら荷物やらが預けてあったからだ。荷物をまとめて外へ出ようとすると、フロアで宿屋のおかみが盗賊に襲われていた。
 「…そのおかみさん、あんまり目がよくないらしくてねぇい…それなのに俺のような正体不明の奴を泊めてくれた上に、色々よくしてくれましてねぇ……」
 こんなことは似合わないか…とハルは照れくさそうに笑った。なんとなく、今まで見た笑顔の中で一番ハルらしい笑顔だとコロナは思った。
 「…それで、襲われているのを見た瞬間、ついカァーッときちまいまして…」
 おかみを助けるために襲ってきた盗賊を返り討ちにしたらしい。―それがいけなかった。
 「盗賊一人一人は弱かったんで問題はなかったんですがねぇぃ…すぐに親玉が現れて…」
 『チョイナー・ベル』の親玉はハルと差して年の変わらない少女だったらしい。遠い東の国にいるような美女だったらしいが、自己主張の激しい我侭な性格の女ボスだと。そしてその女ボスの片腕と思われる体格のいい男がいたという。その男はどちらかと言えばモノケディア王国の国民たちと近い人種だったらしいが、女ボスにべったりだった。
 「それでその二人を中心に一気に俺は囲まれて…あっという間にお宝と商売道具を持っていかれました」
 「…その商売道具って?」
 ファルルが問いかけた。
 「……“鈴”でサァ…」
 「鈴?」
 「…それがお前の媒介か?」
 コロナが尋ねた。ハルがきょとんとした顔をしたが、すぐにあぁと手を叩く。
 「魔法のことですかい?…まぁ少なからず使いますから似たようなものですが、残念ながら正解じゃないですねぇい」
 「…?」
 今度はコロナの頭にハテナが浮かんだ。鈴でどう戦うというのだろうか?
 「……それで、身包みはがされた俺は戦ったんですが、多勢に無勢。おまけに向こうは至近距離でどんばん爆破してくるもんで…なんとか水路に飛び込んで、ここまで泳いできたんでサァ…いやいや、まいったまいった…」
 照れ隠しに頭をかくハルに対し、コロナたちはなんて言っていいやらわからず呆然としていた。『恥ずかしい話』というにはあまりにも壮絶な、生死を分かつような出来事じゃないか。
 「…よく、無事だったね…」
 恐る恐るとした様子でトーンが口を開く。
 「そうさねぇ…」
 ここでハルは口を一旦閉じ、誰にもわからない程度ににやりと口角を持ち上げた。
 「……トーンたちがあと一日遅かったらもしかしたら…」
 そして低く、ゆっくりと単語単語で区切りながら、恨めしそうにハルは言った。
 おぞましい雰囲気に、三人はほぼ同時に肩をぶるりと震わせた。
 ハルは愉快そうに笑った。


    * * *


ハル姐さんのシーン楽しい…。
「大勢に囲まれて身包みはがされた」という言葉で変なこと妄想しないように!(それはお前だけだ)
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