FC2ブログ
 

祭のものぐさもったり手帳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

旅戦の王女  第64話『盗賊を拾った日10』


 「…さて、と」
 ハルはうーんと伸びをするように腕を伸ばす。その背中にコロナが問いかける。
 「―もしかして、もう一度村に戻るのか?」
 「あんたたちは立ち寄らない方がいいですぜい?」
 触らぬ何とかに祟りなしって言うじゃありませんか―そうハルは言い放った。
 「えっ?でも…」
 さも当たり前のようにしれっと言うハルに対し、トーンは何かを言いかけてその言葉を飲み込んだ。ファルルも何かもじもじとしている。どうやら考えていることは同じらしい。
 あれだけの深手を負ったのだ。武器も何もない状態で戻ったところで、展開は同じだろう。今度こそ死体になってこの川を流れ着くかもしれない。…それならばいっそ、自分たちも連れて行ってほしいと、トーンとファルルは言いたいのだろう。訓練施設からここまでの道のりで三人のレベルはそれなりにあがった。だから一人で行くよりは四人で行った方がきっといいと思ったのだろう。
 コロナも同じように考えていた。その方がきっと効率がいいし、久遠の泉にはどちらにせよ寄らなければならない。それなら行きずりにしろ人手は多い方がいい。
 そんな三人の胸中を察したのか、ハルは苦笑したように目じりを下げる。
 「子供だって容赦しない奴らでサァ」
 「でも…っ」
 なお食い下がろうとするトーンの頭に、ハルはぽんと片手を乗せた。銜えたタバコの煙もぽんと跳ねるように歪む。
 「ありがとう。でもこれ以上巻き込む訳には行かないんでサァ。…トーン達は早くここから離れてくだせぇ」
 くしゃくしゃとハルが頭を撫でる。トーンの黒くて短い猫っ毛が不満そうに左右に揺れる。
 「腐るんじゃありませんよ。…キャンプなら別のところでやればいいじゃないですかい?」
 ハルが宥めるように優しく言った。が、コロナとファルルの目が点になった。―やっぱり事情を知らない第三者から見れば、この三人の旅はキャンプに見えるらしい…その通りだろうとコロナは思っていたが、なんとなく複雑な気分になった。―と、
 「……キャンプじゃないもんっ!!!」
 大きな声が川原に響いた。
 ハルが目をぱちくりとさせる。コロナもファルルも呆気に取られながら、声の主を見つめる。―トーンが肩をいからせ、掌をぎゅっと握り締めてい。
 「…キャンプじゃないもん!遊びじゃないもん!!」
 拳を握り締めながらぶんぶんと振り回す。顔を真っ赤にさせて力いっぱい怒りを全身で表している。
 (まずい。癇癪がぶり返した)
 コロナの顔からさーっと血の気が失せた。ここのところ機嫌がよかったし、何か気分が害するようなことがあっても、気持ちをコントロたールすることが出来ていたトーン。…だったが、今の会話の中で何かスイッチが入ってしまったらしい。止めに入ろうとコロナがトーンの前に出ようとしたとき、
 「…僕たちミシロを救いに行くんだもおぉおん!!!」
 トーンの絶叫が木霊した。
 わずかな静寂。ハルは瞳を開いたまま、トーンは肩でぜいぜいと息をさせている。
 「………ミシロ、って?」
 ハルが口を開いた。トーンは唇をきゅっと結び、泣きそうな顔をして俯いている。見兼ねたコロナが簡単ないきさつを説明した。
 モノケディア王国の白の王女・ミシロが原因不明の眠りについたこと。
 その王女を救うため、モノケディア王より旅に出るよう命令されたこと。
 もう一度現れた12年前の魔法使い。闇司祭・ブランクについてのこと。
 「……ふぅん…」
 ハルは黙って聞いていた。瞳は伏せがちだが凛と光っており、先ほどまであったふざけた雰囲気は感じられない。ことの深刻さに気付き、真剣に受け入れている。
 「…そのためには久遠の泉の水を持っていかなきゃならない」
 「なぁ、どうにかならないかな?」
 ファルルが懇願するように割り入ってきた。大きな黒目がちの瞳が不安げに揺らぐ。ハルは真剣な表情のまま、何か考えるように瞳を閉じた。


     * * *


キャンプっぽいよな、確かに…
次回からはいよいよ泉に突入です!
スポンサーサイト

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。