祭のものぐさもったり手帳

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旅戦の王女 第65話『盗賊を拾った日11』

 長い睫毛が頬に陰る。
 紙タバコの紫煙がゆるりと空へ立ち上る。
 「………んー…」
 ガシガシとハルは目を伏せたまま頭を掻いた。それからタバコを口から離し、コロナたちとは反対の方向を向いてからふぅーっと長く息を吐いた。白い吐息が細く風にたなびく。
 たなびいた白い吐息が風に霧散して消えたあと、
 「…俺は保護者には向いてないと思うんですがねぇい…」
 困ったように呟いた。
 その呟きに、ファルルとトーンは肩を落とす。
 「…ピンチになったら、自分の身ぐらいしっかり守るんですぜい?」
 「え!?」
 二人はぱっとハルの顔を見上げた。コロナも思わず見る。
 金と赤のオッドアイが苦笑したように細められる。―困った子たちですぜぃ、まったく…。と、ハルは愛嬌のこもった響きで呟いた。
 「やった!ファルルやった!」
 「やったな、トーン!やったやった!」
 すでに討ち取ったように手を叩きあって喜ぶトーンとファルル。コロナはハルの傍に歩み寄った。
 「…すまない」
 調子を抑えて頭を下げる。
 「いやいや、いいんでさァ」
 新しいタバコを口にくわえたハルが片手で軽くコロナの頭をぽんぽん叩く。(びっくりした…)
 「むしろ謝るのはこっちの方でさァ。怪我させちゃあ悪いですし、それに俺は病み上がりの丸腰ですからねぇい…」
 足手まといになっちゃあ悪いですし…。―ハルは再びジッと火を起こし、タバコを吹かし始めた。
 「………」
 コロナは撫でられた頭を自分の手でなぞり、くすぐったいような歯がゆいような気分に唇を歪める。
 祖父である大賢者には撫でられた覚えがあるが、数える程度だ。最初に褒められたのは魔法書の一部を暗唱できたとき。そうしろと言われた覚えはないが、本を読んでいるうちに自然に暗唱できていた。それを聞いた大賢者は目を細め、優しそうな声色で、
 「お前はやはり天性の智がある。お前のような賢者が生まれて嬉しいことじゃ」
 そう言って頭を撫でてくれた。そのときにはこの大賢者を祖父として持つことができて嬉しいと、心から思った。
 そのときから大賢者はすでに老人で、撫でてくれた手はしわしわの骨の浮いた手だった。ハルのように細くしなやかなそれとは正反対の代物である。
 しかし、
 (…なんか…)
 歯がゆい想いが胸でぽわと熱を持ったように思えた。
 ―その昔、まるで同じことがあったような…。
 疑問は答えを待つ前に打ち消した。
 そんなはずがある訳がない。
 俺は最初から『家族は大賢者だけ』だったのだから。

 「さぁ、行くか!」
 ファルルが威勢のいい声を上げた。トーンが右手を振り上げ、それに続く。
 「その車はそこに置いておいた方がいいですぜぃ?そんな高級なもので行ったら盗賊たちに「盗んでください」って言っているようなもんでさァ」
 ハルの忠告を素直に聞き入れ、車は川原に置き、目立たないように草葉に隠し、更に存在が気づかれないように魔法をかけた。
 武器と回復できる薬草、それと食料や消耗品など、必要最低限の荷物を持ち、四人は久遠の泉へと向かった。



* * *



凄く久々の更新ですが、思ったよりも筆がすいすい進んだ。
ようやく泉に向かいますよ!
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